火葬場となった祭壇は実に荘厳だ。高さ約50mという巨大なもので、金色にきらびやかに光っている。日本の宗教観とはまったく違う雰囲気を垣間見ることができる。
ただ、当然のことながら祭壇に上ることはできない。あくまでも周囲だけしか見ることができない。
入るタイミングはコントロールされているが、出るのは45分を待たなくてもいい。ただ、祭壇の細工や飾りつけのひとつひとつが現代タイ宗教美術の最高峰とも言えるレベルで、すべてを丁寧に見て行くには45分では足りない。その場合はもう一度並んで観ることになる。
祭壇の周囲にある施設には制作の過程や、関連するものなどが丁寧に展示されていた。筆者は芸術的な観点ではどれほどすごいのか理解できていないが、ある日本人美術関係者に聞いたところ、祭壇周囲のタイの仏教神話に出てくる動物の飾りには目を瞠るものがあるのだそうだ。
-
-
白象の像。白い象は王様の乗り物として、実際に発見された場合は王室が引き取っている
-
-
地面にひれ伏して前国王に祈る女性
-
-
製作の過程などが展示され、すべてを見るには45分では足りない。解体されるというが、一部は博物館に寄贈されるという話も聞く
祭壇の周囲には前国王の棺を載せた山車が通った車輪の跡が残っていた。見学するタイ人の中には、祭壇の前で地面にひれ伏して最敬礼する女性もいた。しかし、一般的な観光スポットを周るような気軽さでおしゃべりに興じながら歩く人もいたし、崩御翌日にも見かけた意外とドライなタイ人の姿もあったし、むしろその方が多かった。これも時代のせいなのか。これまでのタイとは違うのだという空気にも筆者は感じた。
なお、火葬の祭壇は延長の噂もあるが、現状は11月末までの公開で、外国人でも入ることができる。ただしパスポートなど身分証明証がないと入れない。入り口となる検問所は3箇所あるが1箇所はタイ人専用で、外国人はほかの2箇所から入る。わかりやすいのはチャオプラヤ河のターチャーン船着き場前の検問所がわかりやすい。無料で服装も厳しくないが、肌の露出が多すぎる服装は断られるかもしれないので注意しよう。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>