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11月13日から始まった週は、日本株はやや調整気味で株価が推移しているが、11月7日、日経平均株価が2万2937円と、1996年6月に付けたバブル崩壊後の高値2万2666円を上回った。1992年1月9日の2万3113円以来となる、約26年ぶりの高値をつけた。また、11月8日、TOPIX(東証株価指数)が続伸し、リーマン・ショック前の2007年2月に付けていたバブル経済崩壊後の高値(1816.97)を10年ぶりに更新し、1991年11月以来の26年ぶりの高値1817.60を付けた。
株価が10倍になる株を「テンバガー」というが、10倍株(テンバガー)達成の銘柄も多く出現している。
11月13日時点で、日本経済新聞社サイトの株価ランキングを使って10年来高値更新企業の検索を行うと、ランキング上位に、ペットボトル成形機大手でインドに製造拠点がある海外向け中心の事業を展開する「日精エー・エス・ビー機械」が表示され、10年来高値(17/11/13)6,220円で、10年来安値(12/10/11)401.0円と、「テンバガー」を達成していることがわかる。「日精エー・エス・ビー機械」は一例に過ぎない。5年前には、まだ、東日本大震災から日も浅く、アベノミクスに伴う日銀の金融政策も始まっていなかった。日経平均で3倍近く上昇すれば、個別株で10倍になることは、全然驚くことではない。
ただ、こんなときだからこそ、今回の記事では敢えてテンバガー達成後の「伸び悩み」や「暴落」について考えてみたい。これまで、「テンバガー」を達成後に株価を維持できない銘柄を、筆者はいくつか見てきた。個別の事例を振り返りつつ、テンバガーが達成後に維持できなかった理由は何であるのかを考えてみたい。
まずは、暴落とは言えないかもしれないが、「テンバガー」達成後に調整したケースを見てみよう。
ベクトル(東証一部;6058)は、SNSなどネット媒体を得意とするPR会社である。2012年3月27日に東証マザーズに新規上場(IPO)。公開価格1,000円、初値1,160円であった。2014年2月28日、最終の株主名簿に記録された株主の所有普通株式1株につき、3株の割合をもって分割した。2014年11月、ベクトルは東証一部へ市場変更した。2016年8月31日、最終の株主名簿に記録された株主の所有普通株式1株につき、3株の割合をもって分割した。
2回の株式分割をした後の基準では、2012年3月の公開日の始値は、129円となり、「テンバガー」を達成している。そして現在も「テンバガー」を維持していると言える。ただ、2017年11月13日の終値は、1,404円となっており、今年6月には、上場来高値1,972円をつけたことを考えると、1,404円は「暴落」とまでは言えないかもしれないが調整段階にあると言えるだろう。
10月12日、ベクトルは第2四半期累計期間および通期の業績予想に関して、連結売上高を下方修正した。(参照:
業績予想の修正に関するお知らせ)、ベクトルは、「事業の性質上プロジェクト単位の粗利率が一定でないことから、売上高に関してはベンチマークしておらず、年度予算策定においても粗利予算数値に対し、前期実績を考慮した一定の割合で割戻しをすることで算出」しており、「当初の想定より粗利率が高い案件が多く、各利益目標を概ね達成する見込みであるものの、売上高については従来の予想値を下回る見込み」としている。
ただ、SNSなどネット媒体を得意とするPR事業の市場は拡大しており、ベクトルの株価は調整の後、上昇に向かうことを筆者は予想している。