スコップ1つでハエや蚊も激減! 誰でもできる「環境再生」の方法

「スコップ1つでできる変化」が社会を少しずつ変えていく

高田造園事務所

土の中には水と空気の流れが常にある。それを円滑にすることで、快適で長持ちする住まいになる(図/高田造園設計事務所)

「土に呼吸させる」と表現してこのことを教えてくれたのは、千葉県千葉市で造園設計を生業としている高田宏臣さん。彼が手掛けるのは庭や家だけではない。里山や森の再生、環境の再生まで手がけ、そのシンプルでわかりやすい手法と環境の劇的な再生が、今さまざまな分野で注目を集めている。 「森の再生」や「里山の再生」などというと、普通の人には手に負えないように思える。しかし高田さんが教えてくれる手法は、スコップ一つから変化につなげられるものなのだ。高田さんいわく、「私たちのおじいちゃんの代までは、土に携わる人だったら、誰でも知っていて、どこでも行われていることだった」とのことだ。  高田さんが手掛ける案件の中に、新潟市の海岸の松林の再生がある。今まであらゆる手段を講じ、多くの予算を投入しても、松枯れによる林の荒廃が止められなかった。そこを高田さんが手掛けるようになってわずか1年ほどで、見事なまでに松林が健全な姿に再生された。  農薬や除草剤や、「危険」と言われるネオニコチノイド系の化学薬品も使わないし、大型機械も必要ない。だから低コストで済むのだ。  高田さんが伝える環境再生の実践は、エコロジー分野のみならず、土建国家の歩みに付随した腐敗政治、腐敗行政、腐敗経済、そして地域自治のあり方を少しずつ、しかし大きなインパクトで変えていくに違いない。あなたの家の蚊やハエの問題から、変えがたいと思わされてきた現代社会の大きな問題まで、良質な方向に変えうる可能性を持っている。  同時に、私たちが本来培ってきた懐かしくも素晴らしい叡智を取り戻して、次の時代に引き継いで行くことにもなるだろう。そしてそれは、スコップ1つでできる変化と同じく、一人一人の小さな存在でも、身近なところでできることなのだ。 <文・写真/髙坂勝> 1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを12年前に開店。著書に『次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)など。 ※高田宏臣さんによる松林再生などの取り組みについて、BS朝日『アーシストカフェ~緑のコトノハ』(11月13~17日20:54~21:00)で放送される予定。
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
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