配送センターからドラッグを直送!? 米国に蔓延るメキシコの麻薬組織カルテル

 米国で活動しているメキシコのカルテルはシナロア、ロス・ベルトゥラン・レイバ 、デル・ゴルフォ、ロス・セタス、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン、フアレスの6つのカルテルである。各カルテルは米国内に麻薬の密売網をもっている。 シナロア:ロサンジェルス、デンバー、シカゴ、フェニックスを配送センターにしてメタンフェタミン、大麻、コカイン、ヘロインを密売卸をしている。  米国の刑務所に収監されているホアキン・グスマン(エル・チャポ)と彼の相棒のイスマエル・サンバダに代わってリーダーとして登場しているのがラファエル・カロ・キンテロである。彼は一番重要な配送センターがあるフェニックスから各都市への発送を管理している。 ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン:米国に根を張るカルテルの中で最も若いカルテルである。メキシコと米国で急成長して勢力を拡大している。  2010年にシナロアから分離したカルテルで、シナロアと同じく多量の麻薬を販売している。メタンフェタミン、大麻、コカイン、ヘロインを密売卸を行っている。メタンフェタミンの取り扱いが多く、メキシコのグアダラハラから米国の国境沿いのティフアナを経由させてカリフォルニアに発送。  配送センターはロサンジェルス、ニューヨーク、アトランタにある。 フアレス:ライバルのシナロアほどには密売網が拡大してはいないが、エル・パソ、デンバー、シカゴ、オクラホマを中心に密売している。大麻とコカインが中心で、最近からメタンフェタミンとヘロインも密売流通網に乗せている。  2013年からチウアウア州でのアヘンの栽培がフアレスの管理下のもとで急増している。 デル・ゴルフォ:テキサス州の南部への発送が主体。配送センターはヒューストン、デトロイト、アトランタ。密売は大麻とコカインが中心で、メタンフェタミンとヘロインも最近から加わった。  モンテレイからバーリェ・デ・リオグランデを経由させてヒューストンに毎週1000キロのコカインを密送しているということが判明している。 ロス・セタス:フェリペ・カルデロン前大統領の政権時の2010年頃に現在のハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンのように急成長していたカルテルである。デル・ゴルフォから分離して出来たカルテルである。しかし、現在は複数のライバルのカルテルの圧力もあって、勢いは後退している。その影響もあって、ロス・セタスは現在二分した状態になっている。  配送センターをラレド、ダラス、ニューオルレアンズ、アトランタに設けてコカイン、ヘロイン、メタンフェタミン、大麻を密売している。 ロス・ベルトゥラン・レイバ:リーダーが逮捕されたり、暗殺されて勢力が後退している。その影響で複数のグループに分割して他のハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン、ロス・セタス、フアレスなどと組んで彼らの流通網にアクセスして密売している。コカイン、ヘロイン、メタンフェタミン、大麻が彼らの密売麻薬である。

小包で配送される薬物

 DEAが最近警告しているのはクリスタル・メス(日本でいうところの覚醒剤)を宅急便や小包で送り状を添えてあたかも普通の荷物のようにして送っていることである。  2015年には麻薬の過度摂取で12,989人が米国で死亡している。DEAの調査で、その93%はメキシコが原産地となっているという。  DEAはこれからもカルテルは米国で成長すると警告している。  米国にとってメキシコは怪物だと見做すだけで、米国政府の麻薬消費を撲滅するための戦いが十分ではないと米国の専門家は指摘している。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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