トランプ来日以前から日米FTA交渉はすでに始まっている

いかにして攻めのFTA交渉を実現できるか

 日本国内には未だ日米FTAへの警戒論は根強い。具体的には、農業分野の関税でTPP以上の譲歩を求められることと、為替相場の円安誘導を縛る目的で、米国が「為替条項」を盛り込むよう求めて来ることを懸念する。  しかし日米FTA交渉であろうとなかろうと、日米経済対話の場で米国が要求することは止められない。問題は、これらに対して日本が踏ん張り切れるかどうかが試されているのだ。TPP以上の要求を農業分野で出されれば拒否するものの、日本は返す刀で米国の自動車関税で攻勢をかければよい。2.5%の関税撤廃を25年で、というTPP合意はいかにも長すぎる。  いわば「攻めの姿勢」が必要になってこよう。政府だけでなく、メディアも守り一辺倒でなく、攻めにももっと関心を持つべきだ。

FTA交渉と「呼ぶ」タイミングが問題

 問題は、それを外に向けて正式に「日米FTA交渉」と呼ぶタイミングだ。考慮すべきはTPP11(米国を除く環太平洋経済連携協定)の動きと国内政治日程だ。  まず11月のAPEC首脳会議の際に、TPP11を固めることが最優先だ。日米FTAと明示的に言うことは、他の参加国に対してTPP11への求心力を失わせることにもなりかねない。タイミングがクリティカルなのだ。  米国については交渉に入ることについて議会から承認を得ることも必要だ。来年秋には米国は中間選挙を控えて、議会や産業界の圧力も増してくる。従って来年前半が日米経済関係の正念場になる可能性が高いだろう。 【細川昌彦】 中部大学特任教授。元・経済産業省。米州課長、中部経済産業局長などを歴任し、自動車輸出など対米通商交渉の最前線に立った。著書に『メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社) 写真/Gage Skidmore
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