平壌マラソンのコースとして通る巨大永世塔(2017年訪朝者提供)
29日、北朝鮮で初となる秋の平壌マラソンが開催されて、日本人ランナーを含む20人ほどの外国人ランナーが参加した。しかし、1000人を超える外国人が参加した4月の春の平壌マラソンと比べると何とも寂しい大会となった。
度重なるミサイル発射や核実験などに対する国連制裁によって、締め付けが強まる中で北朝鮮では、大同江ビール祭りや元山航空ショーなど大型イベントが中止になってしまった。これらのことが影響してか、中国人の訪朝者が激減していると中国瀋陽の旅行会社はボヤく。
現時点でも中国政府は中国人向けの北朝鮮ツアー中止や渡航自粛も禁止も出していない。それでも減少している理由は、北朝鮮への心象悪化があるようだ。
「繰り返されるミサイル発射は中国のニュースでも伝えられています。直接的な北朝鮮批判はほとんどないのですが、一般の人たちが北朝鮮は怖い国と思っても仕方ないでしょう。特に8月のグアムへのミサイル発射予告は中国でも大きく報じられて、その後の9月の核実験は瀋陽でも揺れるなど住民生活に不安をもたらすものだったのでなおさらです」(瀋陽の旅行会社)
瀋陽で北朝鮮ツアーを扱う復数の旅行会社へ聞いたところ、ツアー募集しても集まらないので取り扱いを止めたという会社は1社ではない。
「今年は昨年よりも中国人の訪朝者は確実に減っています。一般的な中国人は北朝鮮を気軽に安く行ける外国と認識しているので、皆で楽しめるイベントやショッピングがないとわざわざ行きたいとは思いません」(同)
中国政府は、中国人の年間訪朝者数を公開していない。そのため、旅行代理店各社の体感から推測する他ないが、昨年7月には新義州への中国人のビザなし日帰りツアーを解禁して昨夏は盛り上がったもののその日帰りツアーも今年は不調とのことだ。一方、怖いもの見たさか、北朝鮮を眺めることができる丹東の鴨緑江を訪れる中国人はここ数年、増加傾向にあるという。
丹東の中朝友誼橋(旧鴨緑江第二橋梁)下から眺める鴨緑江と北朝鮮・新義州(2017年訪朝者提供)
北朝鮮を訪れる中国人は減っているようだが、日本人はというと、代理店によるとほぼ平年通りの日本人が北朝鮮を訪れている。
「ここ10数年ほどは元々特殊な人たちが訪朝するので時勢による影響は少なく、大型イベントが中止になってもイベント目的で北朝鮮へ行く人は少数なので訪朝する人は一定数います」(手配代理店)
アメリカは、9月1日から大統領令によりアメリカ人の訪朝を禁止にしたが、日本は渡航自粛を呼びかけたままだ。日本政府関係者は、憲法で渡航の自由が保証されているので全面禁止にすることは難しいと答える。
しかし、日本人の一般の観光客よりも多いのが、親北・友好団体や地方議員など政治家の訪朝者だ。先週も神奈川の大和市議と横須賀市議2人が訪朝している。政府関係者によると、ここ数年は、親北・友好団体関係者が約150人、現役の政治家約50人、そこへマスコミ関係者30人ほどが毎年訪朝しているとのことなので、実は、観光目的の一般人の2倍以上の日本人が親善や視察、取材訪朝し、合計すると年間300人以上の日本人が北朝鮮を訪れていることになる。