この枠組思考、スキル向上を図るために有用なのだが、使い方を間違えると弊害にさいなまれることになる。枠組思考は意図して使用することが大事な用法だ。どの枠組みを使うか意図して、どの枠組みから自ら選択すること不可欠だ。
これを行わないで、どの枠組みを使うかの指示を待ってしまったり、枠組みの選択を他者に委ねてしまうと、そもそも枠組思考は機能せず、単なる枠組に縛られた固定観念となってしまうのだ。
「自分自身の現在のモチベーションレベル(気持ちの高まり具合)を10段階で見極める」という演習を行っている。このようにガイドすると、決まって寄せられる質問に、「何についての気持ちの高まり具合か?仕事についてか、家庭についてか、この演習についてか?」というものがある。また、「10段階の10や5や3の定義は何か」という質問もよく出される。
それに対する私の答えは、「自分の心持ちが仕事のことで頭が一杯であれば仕事のこと、家庭のことが気にかかっていれば家庭のことになる」「自分が10だと思ったら10、5だと思ったら5」というものだ。
こうした質問が出るということは、枠組に縛られている可能性がある。何に対する気持ちの高まり具合か、10段階の定義は何か、これらを他者に決めてもらうのではなく、さまざまな枠組みを当てはめながら自ら使う枠組みを選ぶこと、これが枠組思考だ。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第55回】
<文/山口博>
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。