思惑買いが進む電気自動車株のなかに10倍はあるか?

ケタ違いのEV相場がやってくる条件とは?

 上昇期待が高い銘柄ほど、株価が一服した調整局面での下落幅も大きくなる。藤井氏はリスクを抑える戦略として以下のようにアドバイスする。 「安永や田中化学研究所のような相場を引っ張る銘柄が理由もなく下がり始めたら、いったん撤退して再上昇を待つのが得策」  ちなみに、欧州や中国だけでなく、アメリカ最大の自動車市場であるカリフォルニア州でも、’18年にZEV(ゼロエミッションビークル)規制が強化され、自動車メーカーは一定数のEVか燃料電池車(FCV)を売らなければならなくなる。  一方日本では、購入者への補助金や税制優遇制度はあるものの、他国ほどインパクトのある普及策は取られていない。近い将来、日本でも欧米や中国のような大胆なEV普及政策や厳しい環境基準が打ち出される可能性もゼロとは言い切れないのだ。  実際、10月に発売される日産の新型EV「リーフ」は、航続距離を400kmに延ばし、一気に実用性を高めている。出遅れていたトヨタもいよいよマツダやデンソーと組んで新会社を設立し、EV開発に本腰を入れ始めた。 「もし今後、日本政府が欧米や中国と同様な目標を掲げるようなことがあれば、それこそ“とんでもない相場”がやってくるでしょう」(藤井氏)  ある日突然やってくるかもしれない「Xデー」が到来すれば、思惑に実需が追いつき、テンバガー(10倍株)続出の期待も。世界的なガソリン車規制の現状から鑑みれば、今が仕込みどき……ともいえるのだ。 <大化け期待の電気自動車銘柄> ●安永【東1・7271】 目標株価:5000円 株価:3580円 単位株数:100株 PER:35.62倍 PBR:4.07倍 エンジン部品メーカー。リチウムイオン電池を従来の12倍長寿命化する新技術を持つ。「国内だけでなく北米に取引先があるのも強み」(藤井氏) ●田中化学研究所【JQ・4080】 目標株価:3400円 株価:2835円 単位株数:100株 PER:110.74倍 PBR:9.26倍 住友化学傘下のリチウムイオン電池などの正極材料メーカー。「今期業績は絶好調で、会社計画より上ぶれる可能性も」(飯村氏) ●モリテックスチル【東1・5986】 目標株価:900円 株価:664円 単位株数:100株 PER:24.96倍 PBR:1.17倍 自動車向け主体の板金加工メーカー。「EV用ケーブル自動巻き式充電スタンドを手掛け、業務拡大の思惑が向かう」(飯村氏) ●菊水電子工業【JQ・6912】 目標株価:1500円 株価:1138円 単位株数:100株 PER:35.23倍 PBR:1.05倍 電子計測器、電源機器メーカー。EV向けの電子計測器や耐電圧試験器などを販売。「割高感もなく、EV関連銘柄の本命の一角」(藤井氏) ●カワタ【東2・6292】 目標株価:1400円 株価:1031円 単位株数:100株 PER:14.87倍 PBR:0.96倍 成形機・合理化周辺機器メーカー。「リチウムイオン電池の正極材製造に使われる混合機の技術が評価されている」(藤井氏) ●大泉製作所【東マ・6618】 目標株価:1800円 株価:1409円 単位株数:100株 PER:38.08倍 PBR:8.37倍 自動車や空調向け温度センサーが主力。EVに使われる次世代温度センサーを開発中。EVでトヨタと協業するデンソーとの取引多い ●ダブルスコープ【東1・6619】 目標株価:2800円 株価:2218円 単位株数:100株 PER:115.52倍 PBR:3.27倍 リチウムイオン電池セパレーターの専業メーカー。「なぜかこの秋の相場では注目されず株価は低迷中なので、逆張り好きな投資家向け」(藤井氏) ●古河電池【東1・6937】 目標株価:1600円 株価:1262円 単位株数:100株 PER:15.33倍 PBR:2.00倍 自動車用バッテリーが主力。首都大学東京と共同でベンチャー起業を設立し、EV用の高性能な時世代リチウムイオン電池を開発中 ●小田原エンジニアリング【JQ・6149】 目標株価:4500円 株価:3385円 単位株数:100株 PER:13.52倍 PBR:1.89倍 モーター用自動巻線機のトップメーカー。EVやハイブリッドカー向けにも力を入れる。目下の株価は調整中なので、再燃に期待 ●藤倉ゴム工業【東1・5121】 目標株価:1100円 株価:888円 単位株数:100株 PER:13.17倍 PBR:0.87倍 産業用ゴム資材大手。リチウムイオン電池よりコストが安いマグネシウム電池関連の主力株。「代替の可能性が思惑視されています」(飯村氏) ※株価等は10月18日時点の終値。期待株価は、短期的に見た当面の目標株価を、飯村氏、藤井氏が算出 【飯村真由氏】 フィスコリサーチアナリスト。独自の相場観と取材に基づいた銘柄選びに定評。成長株を紹介するクラブフィスコの「飯村真由特選銘柄レポート」ではストップ高を連発中。 【藤井英敏氏】 投資情報サイト「カブ知恵」を運営。日興証券、フィスコを経て現職。大型株から小型株、IPOまで幅広く監視し、投資情報を提供する。 取材・文/森田悦子 図版/松崎芳則(ミューズグラフィック)
1
2