無所属でも政党候補者でも、供託金を選挙管理委員会に支払わねばならない。衆議院の小選挙区は300万円、比例区は600万円だ(選挙で一定の得票に達しなければ没収される)。すぐにポンと準備できる額ではないが、既存政党なら国民1人あたり年250円分が税金から議員数に応じて交付される「政党交付金」がある。
例えば2017年度は自民176億円、民進87億円、公明31億円、維新10億円、自由4億円、社民4億円、こころ5億円をそれぞれ受け取った。政党はこれを財源にして、候補者に選挙資金を提供することができる。共産党だけは「国民には政党を支持する自由も支持しない自由もある」と、これまでに政党助成金を受け取ったことがない。
しかし新党の場合、交付金の算定は毎年1月1日時点の所属議員数で決まるので、今年10月に結党しても0円だ。希望の党から流出した「政策協定書」には、原案に「本選挙に当たり、党の指示する金額を党に提供すること」、最終版に「公認候補となるに当たり、党の資金提供をすること」と書かれていたのはこのためだ。
「これのどこが政策なのか」と嘲笑されたが、大量に候補者を立てようと思えばどうしても多額のカネが必要になるのが、日本の公職選挙なのだ。カネがなければ無所属であれ政党であれ、選挙はできない。
神奈川4区のポスター掲示場。現職無所属候補者は、選挙前から張っているポスターを剥がさなければ公職選挙法違反を問われかねない事態となる
もともと政党交付金は「金権政治の克服」を目的に企業献金の代わりに導入されたもの。しかしここにも抜け穴が残っている。政治家個人の政治団体向けには企業献金が禁止されているが、政党支部への企業献金は禁止されていないのだ。
しかも、企業献金を出す側にまで格差がある。資本金10億円未満の企業なら750万円が上限だが、資本金1050億円以上なら上限は1億円。無所属候補は政党交付金も企業献金も受けることはできず、さらに個人献金でも差をつけられている。政党候補は2000万円、無所属候補は1000万円が限度額となっているのだ。
カネにかかわる選挙制度で平等なのは供託金ぐらい。他は、政党候補者が圧倒的に有利となっている。選挙運動でも圧倒的に不利で、資金力も知名度もない一般人が無所属で出るのはかなりハードルが高い。
今回の選挙公約では、共産・維新・希望・立憲民主が「企業・団体献金ゼロ」を謳い、維新と立憲民主がそれに加えて個人献金の促進を訴えているが、「被選挙権の不平等をなくそう」を訴える声は少ない。無所属候補のへの不平等を解消するためには、国民がまず現状の問題点を知ることが大切だ。
<取材・文/まさのあつこ>