なかなか話を聞いてくれるタクシーがいない…
しかし、このままでは取材がままならない。そこで、客を降ろしたばかりの一台のタクシーに乗り、とりあえず「北千住まで」ということで乗車したのちに話を聞いてみることにした。
話を聞かせてくれたのは、キャリア1年未満という新米の運転手だった。軽く世間話に華を咲かせてからいよいよ本題へ。「じつは知り合いから、選挙のときになるとタクシーが空くなんて噂を聞いたんですけど、本当ですか?」と尋ねてみた。すると運転手は「ああ、先輩たちからよく聞きますよ」と答えてくれた。
どうやら噂は本当のようだ。さらに理由を突っ込んだところ「議員や秘書の方々が地元へ帰ってしまうし、テレビのキー局の人たちがそれに連れて地方へと飛んでいってしまうので利用客が減るようですね」ということらしい。さらに、運転手は詳細を教えてくれた。
「先輩たちからの話だと、官公庁の集まる千代田区や中央区、それからマスコミが多い港区でもタクシーが空くようですね。官公庁だとそれこそ、帰宅時間に併せて呼ばれることも多いんですが『ふだん呼ばれる時間帯に呼ばれない』という意見も聞きます。あとは、通常のタクシーと比べて装備が充実している、黒塗りのタクシーも出なくなるそうです」
ほかにも客待ちの列がふだんより伸びている印象があるほか、もっとも分かりやすいのは、領収書の宛名がマスコミの名前ではなくなるといったことが実際に起きるという。
空いているときは「ふだん行かないエリアへ足を運んでみたりしています」と運転手は苦労を明かしてくれたが、赤坂辺りにふだんの活気が戻るのはもう少し先になりそうだ。
<取材・文・撮影/カネコシュウヘイ>