起業すべきかどうか迷っています――石原壮一郎の【名言に訊け】~アラブの諺の巻~

Q:今の会社に入って10年。サラリーマンの悲哀を日々、感じています。一度しかない人生、このままサラリーマンで終わりたくない。そう思って、友達とひそかに起業の計画を練っています。かなり自信があるビジネスモデルです。しかし、アベノミクスもかけ声だけに終わりそうで、景気がよくなる気配は感じられません。そんなときに起業するなんて無謀でしょうか。そもそも、起業なんてリスクのあることはやめて、おとなしくサラリーマンを続けたほうがいいんでしょうか。(東京・33歳・営業) ドバイA:熱いのかそうじゃないのか、よくわからない相談ですね。ちょうど隣りに、若くして起業して苦労の末にどうにか会社を軌道に乗せて今はそこそこ小金を持ってるユリさん(40代、美女)がいらっしゃるので、ちょっと聞いてみましょう。 「いるのよねえ、こういう人。『サラリーマンでは終わりたくない俺』が好きなタイプ。自信があるビジネスモデルなんだったら、さっさとやればいいじゃない。景気がどうだろうと関係ないはずでしょ。だいたい、待ってれば都合のいいタイミングが来るの? あの予備校の先生じゃないけど、いちばんいいタイミングは『今でしょ!』。えっ、この言葉を持ち出してくるのは今じゃないだろって。うるさいわね! 私、このあいだドバイに行ってきたんだけどさ、アラブの諺にこんなのがあるらしいわよ。あれ? ドバイってアラブよね? とにかく、こんなのがあるの。 【何かをしたい者は手段を見つけ、何もしたくない者は言い訳を見つける】 言い訳を並べて、それだけじゃ足りなくて、目新しい言い訳が欲しくて相談してきている時点で、あなたには起業なんて無理よ。いいの、いいの。向いていない人が無理やり起業したってうまくいくわけないから、体裁のいい言い訳を探して迷い続けてなさいよ。迷っているうちは、夢を持っている気持ちよさが味わえるし、夢が破れる心配もないしね。 なに、怒ったの? お前に何がわかるんだ、って? わかるわけないわよ、会ったこともないのに。わかってない私にどう言われようと、やりたいならさっさと行動すればいいじゃない。しない言い訳じゃなくてできる手段を探しなさいよ。ほらほら。 ああ、気持ちいい。私もいろいろあったけど、今は会社がうまくいっているから、こんな偉そうなことが言えるのよね。ああ、起業してよかった。あなたが一念発起して起業を成功させて、したり顔で説教を垂れられる日が来ることをちょっとだけ祈ってあげるわ。最後に、アラブの諺をもうひとつ。『自分で考えろ。誰も脳みそを貸してはくれない』。」

【今回の大人メソッド】できない理由を並べるのは行動を起こす気がない証拠

 起業にせよ何にせよ、新しいことをやる人は、迷ったり相談したりする前に行動を起こしています。自分が何かをやるかどうか迷っていて、失敗したらとか今は環境がとか、できない理由を探すことに熱中し始めたら、じつは本気でやるつもりがないんだと自覚したほうがいいでしょう。ま、行動を起こすほうが偉いわけでは、ぜんぜんありませんが。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
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