国際的な温暖化対策の流れに反し、自公政権は「石炭火力推進」。対する野党の公約は!?

共産、社民、立憲民主各党の石炭火力に対するスタンスは?

野党共闘

合同街宣を行う立憲民主、社民、共産党の3党。立憲民主党の福山哲郎幹事長(左から2番目)は温暖化対策に精通、環境NGOからの期待も大きい

 石炭火力推進の自公政権に対して、野党側にはどんな対策があるのかを質問してみた。  安倍政権による石炭火力推進を強く批判しているのが共産党だ。政策集においても、石炭火力規制までには踏み込んでいないものの「火力発電における燃料を、石炭・石油からLNG(液化天然ガス)へ切り替えていきます」としており、実質は脱・石炭火力だと言える。 「2030年までに電力需要の4割を再生可能エネルギーで賄う」として、太陽光や風力などの推進にも積極的だ。安倍政権のもとで廃止された送電事業者の再生可能エネルギー買い取り義務を復活させる、再生可能エネルギーを受け入れ得るために電力網を増強させるなど、具体的な政策が明記されている。  社民党は政策集の中で「2050年までに再生可能エネルギー100%を目指す」と書いており、それは「段階的に石炭火力を含む火力発電を廃止していく」ということを意味するのだろう。社民党の政策担当常任幹事に確認すると「石炭火力に否定的であることは間違いない」との回答を得た。  立憲民主党は「石炭火力の規制も検討したい」「民進党では、2030年代原発稼働ゼロを目指すとともに、省エネは最終エネルギー消費を2010年実績から約25%削減するとともに、2030年に再生可能エネルギー30%以上、温室効果ガス90年比30%削減という目標を掲げた。これをさらにすすめる形で、リアリズムをもって臨む」と回答した。  同党の幹事長となった福山哲郎参議院議員は温暖化対策に精通しており、国会においても安倍政権の石炭火力推進を批判してきた。環境NGO関係者らも、福山幹事長には期待しているという。

国際的な流れに対応している面もあるが、実現性は未知数の「希望の党」

希望の党の3人

国際的な流れに対応しているかのように見える希望の党だが、その実現性は未知数

 希望の党は、小池百合子代表が小泉政権で環境大臣を務めた経緯もあってか、政策集にも「再生可能エネルギーの比率を30%まで向上させるよう開発導入支援を行う」と明記されている。だが、いつまでにというスケジュールは明らかにしておらず、石炭火力への言及もない。  他方、他の政党が触れていない「EV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)など『ゼロエミッション車』化の加速」といった政策もあり、国際的な流れに対応している面もある。ただ、民進党との合流の過程でのドタバタ劇や自民党との連立の可能性など、小池代表の気分次第で党としての決定事項が変わる傾向が強く、「実際に政策を推進していくかは未知数」(環境NGO関係者)と見られている。  パリ協定では、温暖化による破局的な影響を防ぐため「地球の平均気温上昇を2度未満に抑える」べきだとしており、そのためには21世紀の後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにすることが求められる。つまり、石炭や石油などの化石燃料をエネルギー源とする経済は今後、国際社会の中で成り立たなくなるのだ。  ところが、総選挙の争点としての注目度が低いからか、各党ともに具体的な政策を説明しきれていない。日本の政党は程度の差はあれ、まだまだ危機感が足りない。産業構造の根本からの変革に対応できるよう、温暖化対策を政策としての優先順位をあげるべきだろう。 <取材・文・撮影/志葉玲>
戦争と平和、環境、人権etcをテーマに活動するフリージャーナリスト。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、共著に『原発依存国家』(扶桑社)、 監修書に『自衛隊イラク日報』(柏書房)など。
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