10月9日から3日間だけで500社以上がカタルーニャを去った! 州経済に影を落とす独立運動の余波
S&Pは現在のカタルーニャ州を(B+/B’)と格付けしており、今後さらにスペイン政府と対立が続くと景気の後退を余儀なくさせられるとしている。現在のカタルーニャ州の格付けは債務不履行の心配があるという段階に入る一歩手前に位置しており、厳しい状況下にある。
景気と言えば、スペイン国内からカタルーニャ州への注文も減少しており、零細企業では平常の受注量から70%減少しているという深刻な事態にある企業も現れているという。(参照:「El Confidencial」)
また、カタルーニャからバンカイシャとサベデル銀行の大手2行が姿を消したが、それに続いて他の銀行も本社を州外に移しており、カタルーニャ州で本社を構えている銀行は皆無となった。
カタルーニャ州政府は共和国になった暁には、この2大銀行を共和国のメインバンクとすることを期待していたが、この2行の経営者は政治家の理想論よりも現実経済を選んだというわけである。
企業の州外への移転に関係して、スペインの数紙がカナダのケベック州の例を取り上げて比較している。ケベックもカタルーニャと同様に独立気運が高まった時期があった。1980年と1995年に独立を問う住民投票が実施された。
ケベック党が政権を担った1976-1985と1994-2003年の間に700社がケベック州を去ったという。1990年の2回目の住民投票の前まで大手企業96社がケベックに存在していたが、10年経過するまでに21社がケベックを去ったそうだ。1981年にはケベックはカナダGDPの20.5%を貢献していたのが、2006年には18.5%に減少。2016年のケベックの成長率が1.2%だったのに対し、オンタリオは2.5%の成長を果たしたという。
また、1971年から2005年までに60万人の労働者がケベックを去ったそうだ。カタルーニャもこの数年だけで1万1000人の労働者が他の自治州に働く場を変えている。(参照:「Voz Populi」、「Libre Mercado」)
カタルーニャの問題の解決は短期間に得ることはないであろう。カタルーニャを去った企業が戻って来ることは当面考えられない。むしろ、ケベックと同じようにカタルーニャに戻って来ない可能性が十分にある。
<文/白石和幸 photo by Ricardo GNF via Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
かつてのカナダ・ケベックの事例
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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