NAFTA廃止?米国とカナダの貿易協定誕生か?メキシコはBRICSへ接近か

 自動車関係だけでなく、米国にはメキシコとの貿易取引に500万人が従事しているとされている。特に、テキサス、カリフォルニア、イリノイ、オハイオ、ルイジアナ、インディアナ、テネシー、ペンシルベニア、ジョージアなどの州では、メキシコとの貿易が盛んだ。テキサス州の場合は同州の輸出の38%がメキシコ向けである。メキシコとの貿易取引が減少すれば、同州の経済に深刻な事態を及ぼすことになる。だから、テキサス州の上院と下院の共和党議員もメキシコとの国境に壁を設けることに反対している。  NAFTAの廃止はメキシコとの貿易赤字の解消になるとトランプ大統領が考えているほどには事態は単純ではないのである。  その廃止をトランプ大統領に思いとどまらせるために、メキシコでの労賃の上昇が米国そしてカナダからも要求されている。しかし、安い労働力はメキシコの強みであり、労賃を上昇させれば、逆に米国企業にとってメキシコへの投資に魅力を失うことになる。メキシコにとっては、どの道を選んでも厳しい状況に追い込まれているのである。

BRICS、特に中ロに接近する可能性

 しかし、NAFTAが廃止となればムーディーズによると、メキシコは<1年後には30万人の失業者が出ると予測されている。それに加えて、インフレと金利も上昇するようになる>と見ている。(参照:「Sin Embargo」)  そこで、仮にNAFTAが廃止になった場合にはメキシコでは新しい見方も生まれている。  それは、メキシコがBRICSに接近するという予測なのである。メキシコは米国との関係が薄れて行く中で、新しい市場としてBRICSへの加盟に興味を示しているというのである。9月に北京で開催されたBRICS会議にメキシコはオブザーバーとして参加していたのもその現れだという。  BRICSの加盟国にはラテンアメリカでGDP規模で最大のブラジルがいる。その次のラテンアメリカの経済大国として位置しているのがメキシコなのだ。  ドル体制の崩壊を崩せるのはBRICSのロシアと中国であると見られている。メキシコの政治家はロシアと中国との関係強化に動くであろうと予測されているのである。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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