バルセロナから企業は去り、外国観光者も敬遠し始めている~カタルーニャ独立問題の暗い影

観光が重要な産業だったバルセロナの美しい街だが…… photo by JoaquinAranoa via pixabay(CC0 PublicDomain)

 カタルーニャ州の独立への動きは、それを企んだ州政府にとって高いものについている。  カタルーニャを代表する一連の企業が登記上の本社を州外に移転しているのだ。また、スペインを代表する観光都市バルセロナでのホテルの予約が急激に減少しているという現象が起きている。  仮に、カタルーニャがスペインから正式に独立すれば、EU圏から外されることになる。そのような「カタルーニャ共和国」に本社を置くのはメリットが少ないことだ。企業にとって、EUの単一市場へのアクセスは出来ない、EUからの支援金は途絶える、ユーロ通貨は流通できなくなるという三重苦を抱えることになるからだ。これは企業の自滅を意味することになる。

2大銀行や企業が州外流出

 州政府の独立プランに一番強烈な打撃を与えたのはカタルーニャを代表する2大銀行の州外への本社移転である。サバデル銀行はバレンシア州の都市アリカンテへ、そしてカイシャバンクはバレンシア州の首府バレンシアにそれぞれ登記上の本社を移転した。同様に、中堅銀行メディオラヌムがバレンシアへ、アルキア・バンクがマドリードへの移転を決めた。更に、主要企業も州外への移転を決めている。毎日、次から次へと企業の移転ニュースが報道メディアを賑わせている。  カタルーニャ州のこれら主要銀行と企業の年商総額はおよそ610億ユーロ(7兆9300億円)になるという。すなわち、そこから得る法人税などの税収が「カタルーニャ共和国」になると得られなくなるということになる。(参照:「OK Diario」)

主要産業の「観光」にも打撃

 また、外国からの訪問者数では世界3位にあるスペインであるが、その中でも一番訪問客の多いのがカタルーニャであった。そのカタルーニャを敬遠する動きが起きているのだ。  TUIクルーズのクルーズ客船「マイン・シフ3と5」が10月1日と3日にバルセロナ港への寄港を急きょ変更してバレンシア港に入港するという出来事があった。10月12日も臨時にバレンシア港に入港する予定になっているという。(参照:「Le Vante EMV」)  空路も同様だ。マイアミ、ニューヨーク、フィラデルフィアからバルセロナのエル・プラッツ空港に飛んでいるアメリカン航空はカタルーニャへの訪問を当面控えるように観光者に勧めているというのが明るみになっている。デモや州政府と中央政府との緊張した関係から問題が起きるかもしれないというのがその理由だとしている。(参照:「Libre Mercado」)  バルセロナのテロの後、フライト予約は7%から10%の範囲で減少したが、それも回復していた矢先の今回の独立問題である。(参照:「La Vanguardia」)
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テロのとき以上の打撃
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