現代における結婚の定義はライフガードではなく、単なるストレスの源
つまり、昔とは社会の構造が変わったせいで結婚のメリットも薄れたのではないか、というわけです。具体的には、以下のような例が考えられるでしょう。
・現在では、結婚相手がいないくても他のコミュニティで豊かな人間関係を築ける
・両親世代の高齢化により、配偶者がなくても経済的にやっていけるようになった
・昔と違って独身者に対する偏見が減ってきた
・独身でも経済的に自立することが可能になってきた
ネットが進歩した現代ではコミュニティの幅が広がり、女性も経済的に自立しやすくなったため、昔よりも「結婚」という社会の維持システムが不要になったのは間違いありません。そのおかげで、わざわざ結婚に依存しなくても、健康レベルを保つだけの経済力や人間関係を維持することが可能になったのです。
さらに研究者は、ここで「そもそもすでに結婚がオワコンなのではないか?」との指摘もしています。
「仕事と家庭のバランスは、20世紀に入ってから数十年で大きく変化してきた。この期間で、結婚した男女が一緒に過ごす時間は一貫して減り続けている。家庭と仕事に費やさねばいけない時間が増えるいっぽうで、夫婦がともに過ごす時間はなくなった。いまのカップルにとって結婚は人生のライフガードではなく、ストレスとケンカの原因なのだ」
ワークライフバランスの変化により、現代では夫婦の関係が大幅に変化しました。そのせいで、いまの結婚はかつてのように憩いの場ではなくなり、たんに暮らしのストレス源に変わってしまった、という仮説です。
確かに近年では、多くのデータで結婚のオワコン化が指摘されるケースが増えています。代表的なのは2015年にマサチューセッツ大学が行った研究で、アメリカの国民統計を使って全米の独身と既婚者の人間関係を調べたところ、おもしろい結論が得られました(3)。
・実は独身者のほうが、肉親や友人とコミュニケーションが多く幸福度も高い
・既婚者のほうが孤独なケースも意外なほど多い
結婚のせいで友だちとの付き合いが減ってしまい、逆に対人コミュニケーションの量が減ってしまう傾向が見て取れます。結婚や恋愛の意義が昔よりも薄れた現代では、異性のパートナーを作るよりも、普通に周囲と良い人間関係を築くほうが幸せになれるようです。
この研究に対して、結婚研究のエキスパートであるカリフォルニア大学のベラ・デパウロ博士はこう述べています。
「世の中には結婚を賞賛する人たちが多い。そのおかげで、既婚者やカップルは他人の上に立ったような気分を味わうことができる。実際、未婚者や彼氏彼女がいない人間は、独身バッシングのターゲットになりがちだ。しかし、現実的には、既婚者よりも豊かな人間関係を築けている人はたくさんいる。それなのに、彼らがそこまでほめられるケースは少ない」
実際、さまざまなデータを見る限り、現代で大事なのは「特定のパートナー」ではなく「どれだけ周囲と良い人間関係を築けるかどうか?」です。
そこさえ満たされていれば結婚しようがしまいがどうでもいい話。下手に悩むよりも、いまの人間関係を大事にしたほうが建設的でしょう。
1.Theodore F. Robles, et al. “Marital quality and health: A meta-analytic review”(2014)
2.Dmitry Tumin“Does Marriage Protect Health? A Birth Cohort Comparison*(2017)
3.Natalia Sarkisian, et al. “Does singlehood isolate or integrate? Examining the link between marital status and ties to kin, friends, and neighbors”(2015)
<文/Yu Suzuki>
【Yu Suzuki】
月間100万PVのアンチエイジングブログ
「パレオな男」管理人。「120歳まで生きること」を目標に、日々健康維持に励んでいる。アンチエイジング、トレーニング、メンタルなど多岐にわたり高度な知見を発信している。NASM公認パーソナルトレーナー。あまりに不摂生な暮らしのせいで体を壊し、一念発起で13キロのダイエットに成功。その勢いでアンチエイジングにのめり込む。11月11日、初の著書『
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