地域密着を是に、大手フランチャイズに抗う韓国・「丘岩文具」のパク社長(写真は「中央日報」ウェブサイトより)
世界中で多くの書店や文具店が、大型店やインターネット販売の影響を受け、惜しまれながらも閉店に追い込まれている。そのような現状のなか、韓国・中央日報に紹介された蔚山広域市にある地元の文具店の社長が話題だ。
大型フランチャイズ店の攻勢のなか、地場の商店がどのようにして確固とした地位を築き、また地元の人に愛されているのか。
釜山市の少し上に位置する韓国・蔚山(ウルサン)市の「丘岩(クアム)文具」には無いものが無い。客が探している文具が無くても、数日後には売場に置かれている。大型フランチャイズの文具店や、韓国でも人気のダイソーのような生活用品専門店の攻勢にも「地元の文具店」として35年間愛され続けている。
「丘岩文具」の本店は、蔚山市でも一番の繁華街の一角、現代百貨店の脇道を入った7階建てのビルにある。1階から4階までが売場だ。売り場面積は1階につき661㎡(200坪)程度。1階にはアクセサリーやキャラクター商品などの雑貨が置いてあり、2階~4階には、生活用品や玩具、専門文具などが売られている。
社長のパク・ポンジュン氏は今年61歳。「品数は12万個以上あり、大型スーパーよりも多い」のが自慢だ。
パク社長は1982年に「丘岩文具」第1号店を出す時から、品数の多さにこだわり続けてきた。鉛筆、消しゴムのような純粋な文具から、玩具、事務機器、電算用品、職場に必要な生活用品まで品数を増やし続け、そこから菓子類やコーヒー、缶詰や靴下、椅子、包丁、電球、加湿器というふうにどんどん商品の幅を広げていった。お客さんが探しているものが無かったら、すぐに仕入れるというのがパク社長の信念だという。
「丘岩文具」をよく利用する客の一人は、「インターネットで探して無ければ、無条件『丘岩文具』に来る」と言う。パク社長は「『丘岩文具』には職場に必要なすべてのものがワンストップで買える」と自負する。
「だからこそ、文具店という根本を忘れないために、文具の品数を一番多く取り揃えている」。店舗における、文具と非文具の売れる品数は7:3程度だ。
多くの商品を「低価格」で売る戦略ではない。価格は他の文具店と変わらない。ではなぜ、「丘岩文具」だけが生き残れるのか。パク社長の戦略として、棚卸しの時にC級商品を10%捨て、A級商品を新たに10%取り入れるということを繰り返している。商品の価格よりも、商品の品質を上げることに注力した。