「経営判断が早い」ことが特徴のドンキ、過去にも早期閉店が
閑散とした上層階の階段室には「神保町の歴史」コーナーも。この地に根付けなかったことが少し残念に思えた
僅か半年ほどでの閉店が話題となったドンキ神保町店であるが、ドン・キホーテが「出店後すぐに閉店」した例はこのほかにも複数ある。例えば、2008年2月に開店した「ドン・キホーテ ウエルタ新宮店」(福岡県新宮町)は開店からわずか8ヶ月後の同年10月に閉店。今年に入っても、2016年4月に開店したばかりの「ドン・キホーテ大曲店」(秋田県大仙市)を開店から約1年後の2017年6月に閉店させている。また、都内においても、経営破綻した寿司チェーン「びっくり寿司」本店跡地に出店した「ドン・キホーテ等々力店」(世田谷区)を開店から1年半後の2012年1月に閉店させており、こうした「経営判断の早さ」は同社の特徴の1つであるといえる。
一方で、ドンキ神保町店の建物は現在ドン・キホーテグループが所有しているということで、今後は別業態の店舗や同社のオフィスとして活用される可能性も高い。折しもドン・キホーテは今年2月より一部エリアで注文から58分以内に配達を行う有料サービス「マジカ・プレミアム・ナウ」(majica Premium Now)を開始したばかりであり、ドンキ神保町店跡を都心における配送事務拠点として活用する可能性もあるほか、人通りの多い交差点に面する下層階には業務資本提携を結んでいる「ユニー・ファミリーマートHD」のコンビニ「ファミリーマート」や小型スーパー「ミニピアゴ」を出店させることや、全く別業種の店舗へと貸与することも考えられる。
神保町では「書泉ブックマート」(ABC-MARTが居抜き出店)や「岩波ブックセンター信山社」(破産)、「ブックハウス神保町」(規模を縮小してスタッフが再興)などといった、地域を代表する有名書店の閉店が相次いでいる。そうしたなかでの「24時間営業のドンキ出店」は変わりゆく神保町の象徴的な出来事であり、賛否両論を巻き起こした訳であるが、僅か半年ほどでの撤退となれば閉店を惜しむ声も少なくない。
駿河台下交差点のランドマークは今後どうなるのか――古書街の期待と不安を背負った「不夜城」は、10月13日にその幕を下ろす。
古書店と、ドン・キホーテと、書泉の看板を掲げたままのABC-MARTが並ぶ。交差点に面する一等地だけに今後の活用方法に注目が集まる
<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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