あの「北レス(北朝鮮レストラン)」全滅か? 中朝合弁企業閉鎖決定、中国政府の本気度は?

中朝合弁で運営されている瀋陽の七宝山ホテル

 中国政府が中朝合弁企業閉鎖というかつてない大鉈を振るう発表を9月28日に出した。これは9月12日(中国時間)に国連安全保障理事会で決議された北朝鮮制裁決議2375号に基づいたもので決議日から120日以内の実施が決まっており、デットラインは来年1月9日前後となる見通しだ。  この決定は、中国商務省が通知という形で発表したものだが、さてこれを中国政府がしっかりと履行するかに注目が集まっている。  というのも中国政府が本気で履行したら中国国内に100店ほどあるとされる北朝鮮レストラン(以下北レス)のほとんどが対象として閉店となる。さらに北レス以外にも、瀋陽の「七宝山ホテル」や北朝鮮の書籍全般を扱う北京の「朝鮮出版物輸出入社」も対象として閉鎖される可能性が高くなる。  七宝山ホテルには、すべての日本人旅行者を北朝鮮で担当する「朝鮮国際旅行社(KITC)」の瀋陽支社や「高麗航空」のオフィスが入っており、朝鮮出版物輸出入社は、北朝鮮研究者にとって非常に重要な資料や文献など貴重な情報源の発行元としても知られている。  中国にある北レスのおよそ9割は中朝合弁企業で運営されており、ごく一部の北レスが中国企業として北朝鮮人スタッフを雇用する形で運営されている。

すでに減少傾向にあった北レス

 中朝合弁企業閉鎖のデッドラインは来年1月だが、実はすでに中国の北レスは減少の動きを見せている。  韓国の朴槿恵前政権は、李明博政権に続き2回目となる在外韓国人に対して北レスへ行かないように呼びかけ、韓国政府の強力な対北政策により丹東の北レスが閉店したことなどを『聯合ニュース』などを通して内外へ盛んにアピールしていた。しかし、これらのニュースは、実際は誤報が多く、一時的な休店などで店舗数自体が大きく減ったという事実はなかった。しかし、今年に入ってからは、確かに閉店が増えており、丹東の鴨緑江に面し、観光名所の断橋からも近く好立地なため訪れる日本人にも広く知られていた「三千里」がこの夏までに完全閉店している。

夏は2階のオープンテラスから北朝鮮を眺めながら食事ができた丹東の三千里も閉店した

 今回は本当に北レスの閉店が加速しており、これに今回の中朝合弁企業閉鎖が加われば完全消滅する可能性も現実味を帯びてきたのだ。  では、本当に実現するのか。抜け道はないのだろうか。中国の経営コンサルタントによれば、「中朝合弁を解消して中国企業に変更するという方法はあります」と話す。

上海では北朝鮮国旗を外すなど北朝鮮色を薄める動きも出始めているという

 この場合は、会社は業務を引き継いで存続はできるが、従業員は再雇用となるため就労ビザが許可されない可能性もあるという。事実、中国メディアは、遼寧省、吉林省などの工場で働く北朝鮮人労働者2500人が就労ビザ更新ができず年内に帰国する予定だと報じるなど北レススタッフの労働ビザが更新されるかもかなり不透明な状況だ。
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