クソガキは日本だけじゃない! ケータイを取り上げられ反乱、教師を告訴…世界の教権侵害問題

逆ギレした生徒が教師を告訴

 教師と学生間の「暴力」の問題については、韓国の現状を紹介する。韓国での一番の問題は、実は教育現場のネットリテラシーの問題なのではない。一番は、教師と生徒間における訴訟問題なのだ。  韓国の中央日報によれば、教師の正当な訓育に対しても、学生や保護者が訴訟を起こす事案が頻発している。学生による校内暴力事案に対しても、教師たちは、学生や保護者から強烈な反発を受けたり、また法廷闘争にまで発展したりする憂慮があり、指導がままならないのが現状だ。  ソウル市の或る中学校では、教師が「授業中に教卓を強く叩いた」という理由や、体育の授業中にミスキックしたボールが学生に当たったという理由で控訴された教師がいる。その現場を目撃した同校の教師は、自分にもそのような事が起こり得る可能性を痛感し、生徒や保護者からの訴訟に対する保険に加入した。  また違う中学校では、担任教師に暴言を吐き教室を出ていった生徒に対して、参席要請書を持って家庭訪問をしたら、保護者が無断住居侵入で警察に訴えた事案もある。フェイスブックに教師の悪口を書いた生徒を指導した担任教師は、「人格的な侮辱を受けた」という理由で、逆に児童虐待で告訴された。  教師の訓育に対する訴訟がエスカレートする中、韓国の保険会社各社は、教師訴訟に対する商品を次々と開発している。そもそも教師たちの保険は、学校側の不当な解雇や懲戒等に対する行政訴訟を支援する目的で開発されたが、最近は教師たちの、生徒や保護者の告訴告発に対する費用支援の目的で加入が伸びている。 昨年7月に、韓国教職員共済会が作ったデイケア損害保険の中にも同種の保険「THE-K 教職員法律費用保険」の販売を開始したが、約1年間で契約件数が3000件を超えた。 「韓国では教権に対する侵害が度を越えている」というのは関係者の談。「暴言暴力を超え、告訴まで頻発し教師たちの使命感やモチベーションが低下している。教権保護のための制度を早く整備しなくてはいけない」。  韓国教育部によれば、最近の5年間で教師に対する教権侵害事例は2万3574件で、年平均4700件に達する。ここまで教権侵害事例が増えても、教師に対する保護措置は特にない。今年の4月に全国教職員労働組合の「真の教育研究所」が全国の幼稚園、初・中・高の教師1460人を対象としたアンケートの結果、「教師から教権侵害を報告された校長等の学校管理職が積極的に対応した」という返答は37.2%にしかならなかった。  韓国の教育現場における「教権侵害」に関わる現状は、明日(実際は今日かも)の日本の教育現場の姿なのかも知れない。教育現場におけるネットリテラシー、教権侵害や教師に対する生徒や保護者からの反発。密室化された教室の中で、たった一人の教師の力はほとんど無力だ。  福岡の私立高校の一件にしても、当事者の学生は逮捕されたが、あくまでネット上に拡散したものを警察関係者が見て対応したに過ぎない。  国や地域の教育委員会は、教師の働き方改革ばかりではなく、教師を生徒や保護者からの「暴力」(言葉や書面でのものも含む)から守る制度を構築するのが急務ではないのか。諸外国でも、また日本でもその議論は尽きることがない。 <文・安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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