冷夏だったのにまさかの絶好調! 今、売れているビールとその理由を探る!

 各報道によると、ビール大手4社の8月のビール類(発泡酒、第3のビール含む)の販売量は、各社とも前年同月を下回る結果になった。(参照:「毎日新聞」、「朝日新聞」、「日本経済新聞」、「時事通信」)  この低調は、決して長雨の影響だけではない。昨今では「ビール離れ」と言われており、年々ビール市場が厳しくなっているという現実がある。  しかし、そんな中において、冷夏やビール離れをものともせず人気を博しているビールがある。  それが、今年4年ぶりにリニューアル、8月下旬から本格的に店頭に並び始めた「新・一番搾り」だ。  8月下旬の販売量は、前年同期比125.9%と絶好調。9月に入ってからも前年同期比を上回る水準で販売が推移するなど、勢いはとどまるところを知らない。

なぜ「新・一番搾り」はビール不振の中でヒットした?

 しかし、一番搾りといえば、1990年の3月に誕生して以来、長年販売されてきた定番ブランド。新商品というわけではない。その一番搾りが、不振のビール市場でなぜここまでヒットしているのか?  まず、醸造工程を全て見直し、味わいを進化させたことだ。  なんと100名以上の技術員を動員し、1000回以上の試験醸造を実施。その結果、麦のうまみを増しながら、雑味・渋味につながる成分を低減することに成功。「さらに上品な麦のうまみ」へと進化させた。  その進化した味わいを体験するイベントを国内7大都市で行っているのだが、なんと9割以上の体験者が「おいしい!」と好意的な意見を寄せているという。  実際に本誌編集部スタッフのビール好きを集めて、リニューアル前の一番搾りと「新・一番搾り」を比較させてみたところ、「比べて飲むと全然違う!新のほうは飲みやすい」、「新のほうが香りも強く、より味わい深くなったように思える!」との感想が飛び交った。  そしてもう一つ、この「新・一番搾り」がヒットしたのには、変化と同時に「一番搾り」という原点を再び印象づける戦略にもあった。 「一番搾り」というブランド名は、そもそも一番搾り最大の特長である「一番搾り製法」が由来である。  ビールの「基」ともいえるものが「麦汁」だが、世の中の一般的なビールは「一番搾り麦汁」と「二番搾り麦汁※」でできている。一方、一番搾り製法とは、「一番搾り麦汁」だけを使用する製法。今回TVCMでは、色も濃く、麦のうまみがぎっしり詰まっていそうな「一番搾り麦汁」と、薄い色の「二番搾り麦汁」が登場するが、このビジュアルインパクトと堤さんや満島さんが双方を飲み比べるさまを見て、「一番搾り」というネーミングの意味を改めて認識した人もいたはずだ。 (※二番搾り麦汁とは、一番搾り後のもろみにお湯を注いでエキスを搾り出したもの)  2017年8月20日~2017年9月4日の間の東京キー5局について、CM総合研究所が調べたCM好感度調査によれば、2017年9月前期において、「商品にひかれた」CMとして、一番搾りのCMが1位にランクイン(9月後期は銘柄別CM好感度で総合5位・オンエア作品全6本)していることからも、その反響がわかるだろう。  27年前の発売以来、定番化し、ともすれば新鮮さを失っていた「一番搾り」という名前の意味を改めて明らかにすることで、「一番搾り製法」の良さを改めて広めたのである。  つまり、「新・一番搾り」のヒットは、ベストセラーの地位に安住せずに改善を繰り返し、「上品な麦のうまみ」を追求した取り組みと、ベストセラーとなった理由の原点を再び見つめ直したこと、この2つの要因があったのである。  この冷夏の不振の中で、好調な売れ行きを見せた「新・一番搾り」。2020年の30周年に向けて、「ビールの美味さ」を再認識させてくれる、業界の牽引役になるに違いない。 <取材・文/HBO取材班> 提供:キリンビール株式会社
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