漫画家・国友やすゆき「編集者に『だから大卒の漫画家は使えねえんだ』と吐き捨てられたこともある」【あのサラリーマン漫画をもう一度】

主人公は課長クラスが鉄板

――国友さんの現在の年齢を考えると、サラリーマンだったら同世代はほとんど引退する年齢ですよね。 国友:僕、少なくとも10年前くらいまでは月120枚とか描いてたんですよ。ずっと描き続けていて、さすがに身体がぼろぼろになったので、少しずつ量を減らしていって、今ようやく週10ページしか描かなくてよくなった。実はもう辞めようかと思ってたんです。また描けと言われたので描いてますけど、ちょっとバーンアウト気味なところもあって。 ――仕事量が減ったのって、『新・幸せの時間』の連載が終わったころですか? 国友:そうですね。その後、約束をして先延ばしにしていたものとかを描いてたんですけど、この先オファーがなかったらもう辞めようと思ってた。そうしたら『週刊ポスト』からまた話があった。『時男』という漫画を描いた時、実はうまくいかなくて終わっちゃって。次はもう普通ないよね、と思ってたら、またやってと言われて(笑)。 ――それが今連載中の『愛にチェックイン』ですね。 国友:これぞまさしく僕が培ったサラリーマンエッチ漫画の極み、という感じで描いてマス(笑)。ホテルマンが仕事する中に女性といろんなことがある、っていう。コテコテのお色気漫画なので、反響もよさそうで(笑)。でも、これが最後なんじゃないかなって思ってるんですよ。週に10ページって、いい感じなんですよ 3~4日仕事したらたらあとは休める。むしろ何もないよりはいいかなっていうのもあって。 愛にチェックイン――『時男』は、主人公がタイムスリップしてセックス対決するっていう設定が奇抜すぎたんでしょうか? 国友:『週刊ポスト』だし、やっぱり主人公はサラリーマンでないとウケないんですよ。しかも役職は課長がベスト。部長はダメなんですよ(笑)。 ――部長になれる人って、ごくわずかですもんね。 国友:上から目線になっちゃうので。真ん中で軋轢を受けているのが一番いいらしいんですよ。だから『課長島耕作』っていう始まりは最高だったらしいですね。講談社で仕事した時も「課長を描いてくれ」って言われて、『カネが泣いている』っていう漫画を描いたんですけど。やっぱりね、大人漫画でメインターゲットはあそこなんですね。中間管理職の悲哀ってやつ。そこでシンパシーを得るというのが鉄板みたいですね。 ――個人的には島耕作も課長時代が一番面白いんですよね。 国友:偉くなっちゃうと共感できないんですよ。部下に向かって命令するしかないので。取締役とかになっちゃうと、もう僕なんか全然わからないし(笑)。 ――弘兼先生と交流はあるんですか? 国友:ありますよ。漫研の6年先輩で、在学中は縁がなかったんですけど。僕が売れない頃も時々遊んでもらったりしていたんですよ。弘兼さんが『ハロー張りネズミ』を描く前かな。あの人も若くて元気で、弘兼スタジオのイベントとか呼んでもらってましたね。 ――サラリーマン漫画の描き手として、ライバル視したりしますか? 国友:全然(笑)。レベル違うし!! ライバルとか全然考えない。そういうのに全く興味がないんだよね。そもそも漫画家になったのも、競争しようとかそういうのではないので。 ――『黄昏流星群』みたいに60代以降の漫画を描く、という可能性はないんですか? 国友:う~ん、ないことはないんですけど、僕は弘兼さんとは違って、垂れたおっぱい描くの上手くないからなァ!!(すみませ~ん、先輩!!)。 ――弘兼先生は野村幸代のヌード写真集を見て熟女の裸を描いてる、ってトークショーで仰ってました。 国友:らしいですね~!!(笑)。ただね、僕は、表現メディアは漫画だけじゃないなと思ってるんです。実は30分ほどのお芝居や、歌を書いたりしたんですけど、エロもなくて(笑)漫画では描けないものを書いたんです。メディアを変えれば表現するものも変わるかなって。 ※次回「第4回 構成がしっかりしていてキャラが立っていれば漫画は成立する」は近日公開予定 <取材・文/真実一郎> 【真実一郎】 ライター。サラリーマンの傍ら、『週刊SPA!』にてコラムを連載中。サラリーマンという生き方の現在過去未来をマンガを通して考えた著書『サラリーマン漫画の戦後史』(宝島社新書)も発売中
サラリーマン、ブロガー。雑誌『週刊SPA!』、ウェブメディア「ハーバービジネスオンライン」などにて漫画、世相、アイドルを分析するコラムを連載。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(新書y)がある
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