イスラエル建国以来初となる現役首相の南米訪問、その理由と背景

 一方、このテロ事件調査を担当していた検事アルベルト・ニスマンは、調査が進むにつれて、この事件を中断させる為にクリスチーナ・キルチネル大統領のアルゼンチン政府とイラン政府との間で2013年に覚書が交わされ、それはイランをテロ事件との関係から拭い去るものであった密約の存在に気づくのであった。それを2015年1月に議会で証言する事になっていた。ところが、その前日、彼が死体で発見されたのである。当初、自殺説が有力視されていたが、調査が進むにつれて警察はニスマン検事は殺害されたという結論を達している。しかし、今も判決が下るまでに至っていない。(参照:「Infobae」)

マクリ大統領誕生で変わった

 マクリ大統領が誕生すると、イランはアルゼンチンから遠ざかって行った。イランのザリフ外相が昨年ラテンアメリカを歴訪したが、訪問国は<ボリビア、エクアドル、キューバ、ニカラグア、ベネズエラ>で、アルゼンチンへの訪問は外されていた。逆に、アルゼンチンはイスラエル寄りのメキシコ、コロンビア、ペルーの仲間に加わるのであった。そして、同じくルセフ前大統領までイランと関係が強かったブラジルもテメル大統領になってからアルゼンチンと同じ行動を取った。(参照:「Resumen Latino Americano」)  ラテンアメリカの各国の政治情勢の動きを見たネタニャフ首相はイランに対抗してイスラエルがラテンアメリカと関係強化を開始するのは今だと見たのである。それが今回の訪問となったというわけだ。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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