サウジで建設中のスペイン高速鉄道、運行開始までに駅舎が出来るところは皆無とほぼ確定

プロジェクト参加企業では賃金未払いも

 この問題に加えて、昨年10月からサウジ側でコンソーシアムに1億ユーロ(130億円)の支払いが遅延している影響で、このプロジェクトに参加している一部企業で従業員に給与が払えず問題になっていることも明るみになっている。  9月11日に予定されている双方のトップレベルの会合でこの問題を解決させたいとコンソーシアムは望んでいる。  一方、工事は現在順調に進んでおり、年内に運行が可能になる予定だとしている。当初、線路の土台の建設を担当した中国とサウジのジョイントベンチャー企業に完成の遅れが出た上に、砂の堆積問題などが理由で、今年1月から運行予定だったのが遅れていた。サウジ側の了解を得て2018年3月15日までに運行するとこととなった。コンソーシアム内部でもトップが代わってから工事は予想していた以上のスピードで進み、年内の運行が可能になっている。

サウジ側の施工する工事にも問題が……

 また、この問題とは別に、駅の建設の遅れも問題になっている。ジェッダ駅と空港を繋ぐ駅を加えて全部で5つの駅が建設されており、総工費は20億ユーロ(2600億円)。メディナ駅が一番最初に完成する予定だというが、工事が著しく遅れているのだ。  これはサウジ側が建設を担当していて、スペインのコンソーシアムは関与していない。高速列車が運行開始するまでに駅の建物が完成するところは皆無だと推測されている。メッカ駅はゴールド、メディナ駅はグリーン、ジェッダ駅はパープル、アブドラ前国王に因んだKAEC駅はブルーとシルバーがそれぞれ基調色となっている。どれもサウード家の豪勢さを誇る豪華な建物になるとしているが、完成しないのであればあまり意味がないだろう。  メッカ駅とメディナ駅は、アルカイダのリーダーだったウサマ・ビン・ラディンの家系グループの企業が建設の担当をしていたが、会社は倒産して8万人を解雇するというハプニングもあった。現在はトルコとサウジの企業によるジョイントベンチャーで建設が続けられている。  このプロジェクトの受注にはスペイン王家から当時国王のフアン・カルロス1世が態々サウジを訪問してアブドゥラ前国王(当時国王)と会談してAVEの受注を背後から支援したという経緯もあった。ライバルはフランスの高速列車であった。オファー価格はフランスのそれよりもスペインが2割安価であったそうだ。  あの時点では、勿論、砂漠の砂の問題がこうまで複雑になるとは誰も想像していなかったようである。 <文/白石和幸  Photos by courtesy of Foster + Partners LtD> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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