「ドンキ」と「ユニー・ファミマ」がまさかの提携!―― 一人勝ちの「ドンキ」、なぜ総合スーパーを再生できたのか

 さらに、メガドンキでも首都圏の店舗のような商品回転率の速さや「売り切り商品」は健在で、こうした商品を発掘する楽しみ自体が一種の「アミューズメント」になっていることも人気の要因であろう。ネット通販が台頭する昨今であるが、ドン・キホーテの売場には「ネット上の商品探し」にも似た「発見する喜び」を提供する仕掛けが多く、ネット世代にとってドン・キホーテは「モノ消費」の場でありながら、意識せずとも時間消費型の「コト消費」の場にもなっているともいえる。  また、外国人観光客や外国人居住者が多い地区の店舗では、首都圏でドン・キホーテが培ってきた「インバウンド獲得」のノウハウを生かし、新たに「外国人客」の取り込みに成功した店舗も少なくない。  近年、ドン・キホーテではこうした総合スーパー再生のノウハウを生かすかたちでの新規出店にも取り組んでおり、全国各地で閉店した総合スーパー跡地へのメガドンキ出店を進めているほか、5月には渋谷初の大型総合スーパーである「メガドンキ渋谷本店」を出店させたことも話題となった。  中部地方を地盤とするユニーも、メガドンキの多くの店舗と同様に地方都市に立地する店舗が多くあり、こうしたドン・キホーテの「総合スーパー再生ノウハウ」を生かすかたちで、総合スーパーの「商圏の拡大」「新たな顧客の取り込み」を目指し、再生・活性化を図っていくことになるであろう。 ⇒【写真】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=149727

総合スーパー業態の「MEGAドンキ渋谷本店」

プライベートブランドにも強みのドンキ

 また、ユニー・ファミマでは、今回の業務提携によりドン・キホーテとの商品共同開発に取り組むことも発表している。  ドン・キホーテのもう1つの強みが、その「商品開発力」だ。  ドン・キホーテでは美容・フィットネスグッズから家具、家電、パーティーグッズに至るまで、他のスーパーとは一線を画した内容のプライベートブランド(PB)商品「情熱価格」を展開しており、2016年からはPBの「安かろう悪かろう」というイメージを打破するため、付加価値訴求型の「情熱価格+プラス」、オンリーワン訴求型の「情熱価格プレミアム」の展開も開始。今後は年間約1800品目(2016年現在)の展開を目標としている。6月にはこの「情熱価格+プラス」の商品として、50型4Kテレビを発売。東芝が外販しているメインボードと既存の金型を使うことで価格を抑え、大手メーカーの商品の約半額となる54,800円(税別)で販売し、僅か1週間で完売したことも大きな話題となった。  ユニーでは、すでに他社スーパーと共同で自社PB「スタイルワン」を展開しているが、総合スーパーで多く販売されるような「生活雑貨」「家電」「小型家具」などのPBラインナップ数はドン・キホーテのほうが圧倒的に多い。  そのため、今後は自社ブランドの開発にもドン・キホーテの商品開発力・企画力を生かしたい考えだといい、ユニー店舗へのドン・キホーテのPB「情熱価格」を導入することもありうるであろう。

今後はドン・キホーテにも「提携による変化」が……?

 ここまでは今回の業務資本提携に伴う「ユニー」側の変化について述べてきたが、今後は「ドン・キホーテ」側の店舗にも変化が起きるという。それは、一部のドン・キホーテ店舗へのファミリーマート(コンビニ)出店だ。  ドン・キホーテといえば多くの店舗で「深夜営業」をウリにしており、コンビニを併設する必要性はあるのかと疑問に感じる人も多いであろう。しかし、ドン・キホーテは近年店舗の大型化が進んでおり、その割にとくに深夜は店員が少なく、大型店舗ではレジに並ばされることも多い。そのため「短時間で買い物をしたい」という顧客のニーズを逃していたという問題があった。  今後、ドン・キホーテでは大型店約50店へのファミマ出店を検討しているといい、これからはユニーが展開をしていない地域であっても「両社のコラボレーションした姿」を目にすることになるであろう。  激変する流通業界。僅か10年前まではライバル同士であった「ユニー/サークルKサンクス」「ファミリーマート」「ドン・キホーテ」「長崎屋」がタッグを組むことを誰が予想したであろうか。  ドンキの大原孝治社長は8月24日の記者会見のなかで「流通の大同団結」の必要性を述べた。不振を極めるスーパーマーケット業界において今後も「ドンキの一人勝ち」が続くとなれば、同社を軸とした新たな業界再編、いわば「大同団結」が起きる可能性もあり、さらなる動向が注視される。 <取材・文・撮影/若杉優貴(ともに都市商業研究所)> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」 ※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中 ・千葉ポートタウン、ラオックス主導の「体験型施設」に-インバウンド狙い「サバゲー」や「カップ麺専門店」もビックカメラAKIBA、6月22日グランドオープン-「AKIBAビックマップ」形成へ高島屋羽田空港店、5月25日閉店-大丸も8月27日閉店、伊勢丹が制した羽田空港の百貨店競争
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