十分な警戒態勢にありながら未然に防げなかったバルセロナのテロ【現地在住記者リポート】
実は、カタルーニャ州では<2012年からこれまでテロ攻撃を準備していたという容疑で62人が逮捕>されているのだ。(参照:Voz Populi」)
というのも、カタルーニャ州には<40万人のムスリムが住んでおり>、<それはスペインに住んでいるムスリムの20%に相当する>という。同州でジハードに影響を受けた危険度の高い人物だとされているのが<9837人いる>というのである。この人数は2番目に高い<アンダルシア地方の4536人>に比べ2倍である。それだけ、カタルーニャ州でテロ攻撃が起きる可能性が非常に高いということだったのである。
しかし、残念ながら、今回のテロを未然に防ぐことはできなかったわけだ。(参照:「ABC」)
そしてさらに残念なことがある。実は、スペイン内務省はカタルーニャ自治警察に<歩行者が通る歩道をコンクリートのブロックで囲むようにして、歩道の両側を通行する車が歩道に突入できないようにする事を勧めていた>というのだ。しかし、自治警察はそれを実施していなかった。(参照:「La Vanguardia」)
2004年3月11日にマドリードの電車爆破テロで191人が犠牲者となったが、今回のテロ事件はそれ以来のスペイン国民を震撼させている。
1年前にフランスのニースで起きたトラック突入テロ事件から今回のバルセロナのテロ事件まで8回のテロ攻撃で車が凶器として使われた。これまで130人が犠牲者となっている。容易に借りることのできるレンタカーが凶器に変身する。その容易さから、警察がそれを取り締まって車によるテロ攻撃を未然に防ぐことは非常に難しいとされている。今回の事件もその難しさを示したテロ攻撃であった。
テロ攻撃の後、もう一台のワゴン車で逃走する計画をしていたようで、そのワゴン車をレンタルしたとされるモッロコ生まれで、フランスのマルセーユ在住だったドリス・ウカビラを警察は逮捕している。
また、16日にカンブリルスから更に西南90㎞に位置するアルカナルで民家で爆発するという出来事があった。爆薬物を操作していたと思われる人物が一人死亡した。
彼らが連携して今回のテロ攻撃を実行したのかはまだ不明だが、自治警察はすでに調査を開始している。そして、更に今回のテロ事件に関係していると思われている人物の逮捕が続いている。現在、4人が新たに逮捕されている。
しかし、スペイン国内の警戒態勢はまだ緩められない。というのも、イスラム国が今回のテロ攻撃を祝福したツイッターに、<「Baqiya 1-Barcelona 0」>と記されていたからである。<Baqiyaとは滞留するということを意味する用語だ>ということから、スペイン関係当局ではイスラム国は今後も留まってテロ攻撃を続ける意味に受けて取って、警戒体制を更に厳重にして行くという。(参照:「El Periodico」)
<文/白石和幸 photo by Marie Thérèse Hébert & Jean Robert Thibault via flickr(CC BY-SA 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
増えるレンタカーによるテロ
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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