バルセロナ空港でセキュリティ・チェック検査官の24時間ストが実施。空港はどうなった!?

 この結果を受けて、カタルーニャ州政府は今後の仲介役を辞退。一方のスペイン政府は治安機動隊員を空港にさらに増員することを決め、経営者側と組合側の双方との交渉に裁定権をもった威信のある人物を仲介役として任命することも決定した。その人物の裁定に双方は従う義務があることになっている。  スト実行委員会の弁護士は、スト実行において法的に規定されている義務の90%は満たしているとして、政府のこの決定は権力の乱用だとして反対している。一方の政府の説明は、これまで2度の交渉の機会を与えたが、問題が解決する代わりに悪化しているとした。  政府がこのような決定を下す拠り所にしたのは1977年の政令によるものだ。それによると、<ストが国家経済に重大な支障をもたらす場合には政府が公平な判断ができる仲介役を任命できる>とした規定である。と同時、無期限の全ストに入った為に、安全と治安の維持は難しくなるとして治安機動隊の導入を正当だとした。(参照:「El Pais」)

治安機動隊も実はストしたい!?

 また、政府からの指示を受けた治安機動隊にも不満はあるという。  というのも、15年前まではスペインの全ての空港のセキュリティー・チェックは治安機動隊が担当していた。その業務を政府は取り上げておいて、今度は彼らの協力が必要だからといって出動を要請してきたからである。しかも、治安機動隊の給与は軍隊や警察に比べ低い。彼らも昇給の為にストを実行したいくらいだが、国家の安全を担うという務めからストを実行することが出来ない立場にあるのだ。  しかし、冒頭でも述べたように、治安機動隊が8月11日からセキュリティーチェックに立ち合うようになってから、搭乗客の待ち時間は大幅に短縮された。そして、14日の全ストに入った初日は各セキュリティー・チェックには4人の治安機動隊員が搭乗客のチェックにあたり、そこを通過するのに15-20分と平常通りに戻っているという。それが現在も維持されている。  一方のEulen社のスタッフは現在も24時間の無期限ストに入っている。そして、同社が同じく空港のセキュリティーチェックを請け負っているバレンシア空港やアリカンテ空港でも昇給や労働条件の改善を訴えてストに入るように誘っている。 <文/白石和幸 photo by manuelfloresv via flickr(CC BY 2.0)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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