近年、多様性を増しているSNSなどによる「ネット告発」。
日本でもその事例は増加傾向にあり、中でも企業の不祥事や悪評を元にした、ネットでの告発が相次いでいる。いずれも、「告発」の発信元は個人ユーザーで、SNSを通じて企業や個人を直接批判することで、企業の不祥事などが明らかになっている。また、先月にはおしどり夫婦として知られていた芸能人が妻側からの唐突な「告発動画」をきっかけに、離婚騒動までに発展している。
いまや誰もがスマートフォンを持ち、どこにいてもインターネットを簡単に使いこなせるようになってきた時代。誰がどこからでも世の中へ向けて情報発信が可能となったというその手軽さは、災害時や緊急時には有益なものとなるが、一方では大きな問題を引き起こす要因ともなっている。SNSにはその手軽さゆえに、モラル意識を伴わない無責任な情報発信を助長する側面がある。本来ならば当人のみが知る事実関係でさえ、なんの制約を受けるでもなく、一気に数百万ものユーザーへと知れ渡る。書き込まれた事実の真偽をユーザーが判断するのは難しい。そのような信憑性の乏しい情報が流通した結果、被害者や名指しを受けた企業は信用を大きく損なう危険性がある。現に数多くのSNSサイトは「フェイクニュース」という、いわばデマへの対策を強化している。
今回の韓国の盗用疑惑も本来ならば、弁護士を立てた上で双方やりとりをすればここまでには至らなかったのではないだろうか。ここまでくると事の真偽が重要なのではなく、周囲からの評価を争っているようにも見える。結果的に盗用疑惑を指摘されたコ氏は誹謗中傷を受ける羽目になり、ある程度の「生徒離れ」は免れないだろう。今後も「人の教材を使って授業するパクリ講師」の風評は完全には消えないのだ。
さらに、ネットには特別な執拗さが存在する。告発した文章は長くインターネット上にとどまり、削除したとしても完全には消しきれず、定着してしまう恐れがある。また、ネットユーザーによって面白おかしく脚色され、拡大されていく。このようなネット社会において、拡散された際の被害者側の救済処置は十分ではない。したがって、コ氏が早い段階で法的措置という強硬な姿勢を見せるのも納得だ。
告発したイ氏が「(自身の教材が)2年間にわたり使い回されている」と話している背景から、盗用問題に関していうと、コ氏との二人の問題ではなく、今後はEBSのネット塾側とイ・ダヂ氏の問題として扱っていく事例だと言える。一方で盗用問題とは別に、名誉毀損問題として告発を行うであろうコ・アルム氏。
SNSでの告発によって、問題をより複雑化してしまったイ氏。真偽はともかく、今後自身に回ってくるツケは相当大きいものとなりそうだ。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>