国連ジュネーヴ事務局のFacebookページも早速条約の締結を祝福。写真はニューヨークの国連本部前にある銅像
しかし、NPT偏重派と核兵器禁止条約偏重派の意識の隔たりは現実として大きい。その差が埋まらない限り、実際の核軍縮は進まないと見られる。核兵器禁止条約の中心的存在であるコスタリカ政府は、今後どんな戦略をとっていくのだろうか?
「まず核兵器禁止条約の発効により、NPT一辺倒だった核軍縮・核兵器廃絶の国際法的根拠を複線化します。そうすることで非保有国の核軍縮・核廃絶に関する発言力に法的根拠を持たせ、保有国と同じレベルまで引き上げます。そのうえで双方の橋渡し役を務める。最終的には両側のアプローチを統合することで、核軍縮を実効化するというわけです。
実は、コスタリカは気候変動枠組条約締結国会議でもこうした作戦を成功させているんです。炭素の排出国と吸収国、先進国と途上国の橋渡し役を務めることで、196か国が合意する今世紀最大級の合意を取りつけました」
今回の核軍縮・核廃絶へのアプローチが現実のものとなれば、コスタリカの国際的な名声はさらに増すだろう。しかし、核兵器禁止条約の可決にも20年かかったのだ。今後実現していくためには長い年月がかかることが予想される。
「コスタリカは、そういった長期戦略はお手の物です。例えば米州人権裁判所の設立(1980年)には30年をかけました。これこそ、軍隊を持たない“丸腰国家”のコスタリカが狙う『積極的平和外交』なのです」
<文/足立力也(コスタリカ研究者。著書に
『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める)