なら万葉主宰者で、初代王者のマホロバ。チャンピオンベルトの一部には木が使用されている
日本の歴史・文化発祥の地といわれる奈良県。日本最多の史跡をもつことから(文化庁調べ)、近隣の大阪府や京都府に次いで観光客数が増えている。
ローカル(ご当地)プロレス団体が存在し、地域密着型の活動を続けている。
なら万葉プロレス。覆面レスラーの「マホロバ」が主宰者だ。
マホロバは学生プロレスを経て海外でデビュー。大学卒業後は世界を放浪するバックパッカーだったが、あるレスラーから声をかけられたことで復帰。
そして、父親でもあるマホロバは子どもが犯罪に巻き込まれることが少なくない昨今、何ができるを考えた。そして父と一緒に観たプロレスを思い出し、プロレスによる地域活性化を志した。
橿原青年会議所からの呼びかけで、2008年10月11日、奈良県・橿原神宮公苑で旗揚げ。橿原神宮は初代天皇とされる神武天皇と皇后を祀っている神社で、1890年(明治23年)に立てられた官幣大社だ。
プロレス団体の旗揚げは、体育館やホールなどで華々しくおこなわれることが多いが、皇族ゆかりの地で産まれた団体はおそらくなら万葉だけだろう。
歴史ある公苑が会場になる
インパクトのあるマスクマン、ぐらん・ハニワ。拙著『ローカルプロレスラー図鑑+2016』より
ローカルプロレス団体の例にもれず、選手は奈良県にちなんだキャラクターばかりだ。
埴輪(ハニワ)をモチーフとした「ぐらん・ハニワ」。出身地ならぬ出土場所は奈良県高松塚古墳、生年月日ならぬ推測製造時期は縄文時代。多少若めにサバを読んでも1500歳ほどになる、文字通りの古豪選手だ。
得意技は、片手をあげたハニワポーズで倒れ込み拳を落とす「フィストドロップ」や、美しい弧を描く「縄文スープレックス」など、クラシカルならぬヒストリカルなファイストスタイルだ。
古代ではなく近代の歴史をモチーフとした選手もいる。名前は「月光ウルフ」。なぜ奈良でオオカミ? と思っただろう。奈良県東吉野村は、1905年1月最後にニホンオオカミが捕獲された場所なのだ。絶滅は確定しておらず、生存の可能性が消えていない幻の動物だ。
幻の動物がプロレスラーになった、月光ウルフ
ご当地ネタといえばグルメだって外せない。「天理ラーメンマン」は、宗教都市として知られる天理市のご当地ラーメン。スープは豚コツと鶏ガラベース、具は炒めた白菜や豚肉などを用いる濃厚ラーメンだ。
奈良県民のソウルフード戦士、天理ラーメンマン
この他にも、奈良県民しか分からないようなローカルなネタをモチーフとした選手ばかりで、ひとりを除き全員マスクマンなのも特徴だ(そのひとりですら顔にペイントをしている)。