バイオベンチャーの株価はどこで騰がる? 株価動向と関連イベントの関係を振り返ってみた

 そこで、そーせいグループの過去の株価動向を例にとって、バイオベンチャーの株価、および関連イベントを振り返ってみたい。

「そーせいグループ」のケース

 そーせいグループ(東証マザーズ;4565)は、グローバルに医薬品開発に取り組む日本発バイオ医薬品企業で、アルツハイマー病、統合失調症、がん免疫、偏頭痛、依存症、代謝疾患等の画期的なバイオ医薬品の創出を目指している。  そーせいグループの過去10年間を振り返ってみると、営業利益および純利益はずっと赤字が続き、ともに黒字になったのは2014年からである。このことから、前年の2013年から株価が上昇したのではないかと推測されるが、やはり、2013年と2014年を比較すると、株価の水準が一段階上がったように見える。この時期は、「ウルティブロ」(慢性閉塞性肺疾患(COPD)の諸症状を緩和するための気管支拡張剤)の欧州および日本における製造販売承認に伴う開発進捗に応じたマイルストーン収入および上市(販売)後のロイヤリティ収入が拡大した。したがって、薬剤の製造販売承認というイベントは、株価を上昇させた。  さらに、2015年11月から2016年5月にかけて、そーせいグループの株価は、およそ5000円から25000円程度まで急騰した。この約半年の間、ほぼ毎月1回のペースで、以下のような複数の大手製薬企業との提携が実現し、収益の大きな要因となる好材料のIR、プレスリリースが続いている。(参照:株主通信) ●2015年8月、AstraZeneca社と、がん免疫療法開発に関する提携 ●2015年9月 Heptares社、米国国立薬 物乱用研究所(NIDA)から コカイン乱用及び依存症を適応とするオレキシン(OX1)受容体拮抗薬の研究に授与 ●2015年10月、ノバルティス社に導出したCOPD治療薬が米国で承認 ●2015年11月、Teva社と新規低分子 CGRP受容体拮抗薬に関して片頭痛治療を目 指した提携 ●2015年11月、Pfizer社と最大10種の GPCRターゲットに関する新規医薬品開発に向けた戦略的提携 ●2015年12月、NVA237(グリコピロニウム臭化物)の導出先であるノバルティス社が同剤を含有する新規3剤配合型吸入喘息治療薬(QVM149)の 第3相臨床試験を開始 ●2016年4月、Allergan社とアルツハイマー病等の中枢神経系疾患に対する新規治療薬の開発・販売提携 契約一時金125百万米ドルを受領。  上記のように、好材料のIR、プレスリリースがそーせいグループの株価を押し上げた。そーせいグループのケースでは、開発パイプライン(開発中の新薬)の数が多いため、好材料のIR、プレスリリースが続くことにより、株価の上昇トレンドを形成できたと考えられる。
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プレスリリースがあまり出ない企業の場合
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