「ネット証券でもIPOの抽選に申し込めますが、競争倍率が高すぎて当選するのは困難です。穴場は中堅の店舗証券です。IPOを引き受けている中堅の店舗証券は、いちよし証券、岩井コスモ証券、エース証券、エイチ・エス証券、岡三証券、極東証券、東海東京証券、東洋証券などがあります。そして、できるだけ郊外の地元の支店に口座を開きます。
こうしたところは大口の顧客が少ないので、IPO株を回してもらえる可能性が高い。また、金額は大きくなくて構いませんから、投資信託などを購入し、店が開催しているセミナーに通って支店の担当者だけではなくIPO株配分の決済権を握る支店長と名刺交換をして名前を覚えてもらって、時々、お土産を持っていったりする。
これぐらい人間関係を深めると、IPO株を回してもらえるようになります」
ネット証券の画面に慣れた人にとっては、一見回りくどくも見えるこの方法が、IPO投資ではもっとも近道なのだ。実際にIPOを回してもらえたら、お礼に宴席やゴルフなどに誘ったりすると、ますます人間関係が深くなり、極秘情報までもらえるかもしれない。
株と同じく一筋縄ではいかないが、リスクをより避けたい人はこうした複合技を苦にせず、トライしていくべきだろう。
<西堀氏の推奨テクニック>
【公募・売り出し買いの初値売りで儲ける】
新規公開する前に公募、または売り出される株式を証券会社から入手し、上場後の初値で売却する。IPO投資と言えば、通常はこれのことを言う。時価総額の小さい銘柄の方が利益を見込めるが、そのぶん、入手困難となる。初心者は大規模に販売されて入手しやすい大型優良株を狙おう。ネット証券でも抽選に申し込めるが、極端に競争倍率が高いので、地元の証券会社の担当者に頼んだほうが入手しやすい。
【上場当日のデイトレで儲ける(20%超の銘柄、ストップ高銘柄)】
IPO株は上場当日の値動きが激しい。’16年に公開した83銘柄中、38銘柄で上場当日の高値から初値を引いた変動率が10%以上だった。IPOの抽選に外れても公開当日に初値で買って高値で売れれば大きく稼げる。ただし、終値で売ると、-1.9%となるので持ち越しは危険。高値が出やすい銘柄は初値のパフォーマンスが低くロックアップ(大株主が一定期間、株を売却できないルール)がかかっていることが多い。
【上方修正、決算のタイミングで買ってその後の上昇で儲ける】
上場後、右肩上がりに上昇する銘柄もある。上昇の転換点は業績の上方修正と増収増益の決算発表だ。そのタイミングで機関投資家が成長を確信し、買いを入れるようになる。1年以内にIPOした銘柄の上方修正や決算発表は、「IPO ジャパン」のホームページのメニューにある「適時開示情報」から検索できる。西堀氏は「初心者がIPO株で儲けやすいのはこの方法です」と言う。つねに企業動向をチェックしておこう。
業績の上方修正と増収増益の決算発表は儲けるチャンスだ
【市場変更のタイミングで儲ける】
IPO株は東証マザーズなどの新興市場に上場することが多いが、東証1部へ鞍替えすると、インデックス投資信託などの機関投資家が買いを入れるようになり、株価が上昇しやすくなる。東証1部の指定基準は、時価総額40億円以上、最近2年間の経常利益の合計が5億円以上、などとなっている。
この条件に合致しそうな銘柄は、市場変更の3か月ぐらい前から値上がりが始まるので、仕込んでおきたい。
IPO株は新興市場に上場することが多いが、東証1部へ鞍替えとなると市場変更の3か月ぐらい前から値上がりが始まる。
「IPO ジャパン」編集長【西堀 敬氏】
株)日本ビジネスイノベーション代表取締役。IPO関連情報の集積度で日本一を誇るサイト「東京IPO」の編集長を’02年から’15年まで務めた。マスコミ出演等を通じ、IPOの啓蒙に尽力
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