poosan / PIXTA(ピクスタ)
定期評価制度を廃止して随時評価に移行した企業は現れ始めている。株式会社三栄建築設計は人事評価そのものを廃止したという。人事評価をなくしていったいどのように人事を運用しているのか? そしてその狙いは何なのか?
多くの企業で取り入れられている、分解スキル反復演習型能力開発プログラムを開発し、自身も革新的な人事運用を主導している山口博が、社員に対する人事評価を廃止した、東証一部上場の株式会社三栄建築設計人事総務部長 勝沼等氏を直撃した。
山口:三栄建築設計が人事評価そのものを廃止したと聞いて、革新的な人事運用を数々主導している私でさえ、正直、耳を疑いました。
三栄建築設計人事総務部長 勝沼等氏
勝沼:ほとんど全てといっていい企業で、定期的に人事評価が行われています。上司が部下の業績や能力を、例えばA、B、C、D、Eの5段階で評価し、A、Bであれば昇給させるというものです。そして、期末には多くの企業で、上司は部下の評価に取り組んでいます。それから行われるのが、評価のすり合わせです。この社員はBだCだ、いやBだAだとやりとりがされるわけです。
山口:私が人事部長をしていた企業でも、1日がかり、2日がかりで、全マネジャーを集めて評価会議を実施していました。それにかける時間と労力の総和は相当なものがありましたね。
勝沼:労力もさることながら、その結果、確定される評価が、標準的な評価に収斂してしまう例が少なくないのも問題でした。ああでもない、こうでもないとやりとりしたあげく、当たり障りのない評価に落ち着いてしまう。当社の社長はこの点を改善したいと思っていたんです。このことが評価制度廃止を検討するきっかけになりました。
こうした人事評価というものが、社員の業績や能力の向上、果ては企業のビジネス伸展に役立っているのでしょうか。形式的な手続きに終始し、それもその手続きに時間と労力をかけたにもかかわらず、人事評価の本来目的である社員や企業の業績伸展に役立っていないのであれば、それは是正すればよいのではないかということです。
山口:確かに、制度運用をしているうちに、運用の仕方が形式化し、多くは運用が複雑になって時間と労力が過大となり、その制度の本来目的を果たせなくなっている事態は、多く見られます。人事制度運用もそのひとつかもしれません。
本来、社員の業績や能力を適正に評価し、処遇に反映させ、社員のモチベーションとパフォーマンスを高めるための仕組みである人事評価制度が、その目的を果たせないとしたら、実施し続ける意味はないということになりますね。
しかし、人事評価を廃止し、社員のモチベーションとパフォーマンス向上はどのように実現しようとしたのでしょうか。処遇判定はどのようになさったのか。お聞きしたいことはたくさんあります。