中国との対立で戦略的に親日色が高まるベトナム

ハノイ

フランス統治時代のコロニアル様式の建物も多数残るハノイ

 ベトナムと中国の関係が悪いと報じられているが、実際はどうなのか今年10月31日ベトナムとは無関係なハロゥインパーティーで大盛り上がりするベトナムの首都ハノイ最大の観光地「旧市街」を訪れてみた。そこで見た風景は、3年間の間に徹底的に中国製品(に見えるもの)が排除されたマーケットだった(前編「高まるベトナムの「反中」。ハノイの町の「ノー・チナ」を追う」(【前編】高まるベトナムの「反中」。ハノイの町の「ノー・チナ」を追う)――。  中国、ベトナムと対立は激化しているが、その根底にはある共通点がある。  かつてハノイに留学したことがあり、現在は商都ホーチミンに駐在するN氏によると、「ハノイでもホーチミンでもとにかくベトナム人は、中国が嫌いです。どれくらい嫌いかといえば、とにかく嫌いと全否定しているので今の中国の現状、たとえば、今や上海が世界を代表する巨大都市となっていることさえ知る人が少ないほどです。そもそも、中国に対して関心を持っていないので知ろうとしていないと思います」と語る。一般的なベトナム人は、長い内戦による文化破壊や社会主義の弊害なのか、思考停止になっている人が多いのだ。この辺り、相互に嫌いあっていながらも、一般的な中国人と近いかもしれない。  そんな中、昨年、「日越外交関係樹立40周年」を迎えた。ベトナムは親日国とされているが、現実的には、中国とのバランスを保つために戦略的に親日色を濃くしているようにも感じられる。  日本からの観光やビジネスの現状を知るためハノイ旧市街にオフィスを構える「APTトラベル ジャパン」を訪れた。同社は、日本人向けツアーを提供する旅行会社で、日本人スタッフが6人在籍しており、ツアー以外にも、手作りマップを作成して配布したりと情報の発信基地にもなっている。「日本人向けツアーは増えており、観光以外にも法人様の視察ツアーなどの問い合わせや実施も増えています」と担当者は話す。  今年分から統計の取り方が変わり、純粋にハノイだけの在留邦人数ではないが、5592人(外務省・平成26年要約版 )でチャイナリスクなどの影響か、在留邦人数は、この数年、二桁以上の伸びで増えており、短期出張者や観光客も含めるとこの3、4倍の日本人がハノイにいると思われる。  ベトナムと中国との関係悪化が続くことは、日本にとってチャンスをもたらすのか。それとも、新たな問題へと発展していくのかは、現時点では、まだまだ不透明である。 <取材・文・撮影/我妻伊都>