鮮中央テレビが放送した大陸間弾道ミサイル「火星14型」の写真 Image Credit: KCTV
北朝鮮は7月4日9時39分(日本時間)ごろ、北朝鮮西岸の亀城(クソン)付近から、1発の弾道ミサイルを発射した。日米韓などによる追跡の結果、ミサイルは約37分間にわたって飛行し、高度約2800kmに到達。飛距離は約900kmにも達し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。
そして同日15時30分、北朝鮮の朝鮮中央テレビは「特別重大報道」を放送し、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の『火星14型』の発射試験に成功した」と発表した。
この火星14型は、たしかにICBMと呼べるだけの性能はもっているかもしれないが、兵器としてはまだ不十分で、米国にとって危急かつ明確な脅威ではないかもしれない。それでも、北朝鮮のミサイル技術が着実に進歩し続けていることは間違いない。
公開された写真や映像を見るに、火星14型は、今年5月に初めて発射された中距離弾道ミサイル「火星12型」を改造し、ICBMにしたものだと考えられる(参照:『
北朝鮮、新型ミサイル「火星12」型を発射――その正体と実力を読み解く』)。
火星12型は単段式といって、ミサイルが発射時と同じ、そのままの形でずっと飛んでいき、所定の高度に達したところで弾頭部分を切り離す、という仕組みをしている。
単段式はシンプルなので、造りやすく、運用もしやすいものの、空になったタンクをそのまま抱えて飛び続けるようなものなので、ミサイルの性能が限られてしまう。火星12型の最大射程は約4000~5000kmと考えられているが、もしそれをもっと伸ばして、射程5500km以上のICBMにしようとした際、最も手っ取り早い方法は、その機体の上に小さなロケットを追加で載せて、2段式のミサイルにすることである。
この場合、ミサイルはまず1段目のエンジンで上昇し、やがて空中で分離。続いて2段目のエンジンに点火して飛行を続ける。こうすることで、効率よく弾頭を加速させ、遠くまで飛ばすことができる。ちなみに人工衛星を飛ばす宇宙ロケットも、同じ理屈で2段式、あるいは3段式を採用している。
ただ、写真を見たところ、火星14型の第1段は、火星12型より全長が短くなっている。おそらく単に火星12型の上に第2段を載せただけでは、全体の効率が悪くなるためか、あるいは重くなりすぎてエンジンの推力が足らなくなるためだろう。
この2段目については、北朝鮮は今回の発表の中で「新開発の高比推力エンジンを使用した」としている(比推力というのは燃費とほぼ同じ意味)。また6月には衛星写真から、北朝鮮のロケット試験場で、小規模なエンジンの燃焼試験が行われたことが判明しており、おそらくこのとき試験されたエンジンと同型のものが、今回発射された火星14型の2段目に搭載された可能性が高い。ただ、エンジンの形など詳細はわからない。
さらに弾頭部分にも変化があり、先端に弾頭を剥き出しで搭載していた火星12型とは違い、火星14型ではフェアリング(カバー)のような部品がついており、その中に弾頭が入っているものと考えらえる。
なぜ火星12型のように剥き出しで搭載しなかったのかは不明だが、火星12型に積んでいた弾頭に問題があったなどの理由で、形状や仕組みなどを変えてフェアリングの内部に収めるようにしたか、あるいは今回は弾頭は積まず、ダミー・ウェイト(重り)を積んだため、ということが考えられる。