訪朝アメリカ人大学生死亡事件で見えてきた、10年で10倍強に激増した欧米人訪朝者

 ワームビア氏死亡を受けて彼を手配したヤング・パイオニア・ツアーズ(中国・西安)は、アメリカ人の訪朝手配を停止すると発表した。  しかし、実際のところアメリカ人を含む欧米人による訪朝は、ここ十数年で、10倍ほど増えているのだ。

欧米人ツアーの宿泊先になることが多い羊角島ホテル(2016年12月31日撮影)

 昨年、観光目的で訪朝した日本人はというと100人ほどで、2002年、最初の小泉訪朝の年である「アリラン祭」初年度の約1200人をピークに年間100人から130人とほぼ横ばい状態であった。しかし、ロイターの報道によれば、正式発表はないが旅行代理店の話からの推測として2003年は約700人だった欧米人訪朝者が10年後の2013年には、約6000人にまで増えているという。  2012年は、北京の高麗ツアーズ1社だけでアメリカ人約500人が訪朝しているという。さらに中国の代理店へ確認したところ昨年の欧米人訪朝者は約8000人、うちアメリカ人は約300人とのことで欧米人訪朝者の増加傾向は続いているようだ。

平壌駅へと続く蒼光通り(2017年4月撮影)

 北朝鮮を観光で訪れる欧米人が増えた大きな要因は、北朝鮮専門の旅行会社が次々と誕生したことだ。最古参は、1993年に中国在住のイギリス人が創業した高麗ツアーズ(北京)。2008年には、ヤング・パイオニア・ツアーズ、こちらも創業者はイギリス人。2011年は、チュチェツアーズ(イギリス・ロンドン)、その他にも、ウリツアーズ(アメリカ・ニューヨークと上海)も2000年代後半に誕生している。4月に来日講演したカナダ人のマイケル・スパバ氏も欧米人向けの北朝鮮旅行の企画手配をしているので、北朝鮮が外貨獲得のために観光業へ力を入れたことと連動してビジネスチャンスと捉え北朝鮮専門旅行会社が誕生したことがわかる。  拉致問題を抱え、安全保障上の脅威でもある隣国日本とは違い、地理的に遠い欧米には、未知なる謎の国でしかないのだろう。欧米人向けの旅行会社では、非日常や神秘体験、冒険心を掻き立てるようなキャッチコピーでPRし集客を重ねてきた。きっと「秘境探検ツアー」のような位置づけなんだろう。  ワームビア氏死亡事件の影響で欧米人訪朝者は多少減ることが予想される。しかし、忘れてはいけないのは、もっとも北朝鮮を訪れれている中国人の存在である。中国の代理店によると、昨年、訪朝した中国人は約2万5000人だそうだが、ここには昨年から中国で正式に始まったビザなし訪朝の人数は含まれていない。ビザなし渡航者を含めるとこの人数の2、3倍に達するだろうと言われる。いくら欧米人が減ってもその10倍いる中国人旅行者が北朝鮮旅行を下支えする状況は続く。 <取材・文/中野鷹> ※参照 「宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」 7月5日通巻40号
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID@you_nakano2017
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