素人が他人の嘘を見抜く精度はたった54%!ヤマ勘で人を疑うべからず

正しく判定するにはバイアスをかけず、戦略的な質問を

 それでは、誤判定をしないようにするにはどうしたらよいのでしょうか?  回答としては、緊張のサインとウソのサインとを正しく分け、極力バイアスがかからないように人を観て、戦略的に質問をする、ということです。  ウソのサインと間違えられやすいよくある緊張のサインは、目が泳ぐ、瞬きが増える、顔や鼻に触るです。これらのサインは正直者にもウソつきにも緊張に伴って現れるため、これらのサインをウソのサインだということは出来ません。  本当のウソのサインは、声のピッチが高くなる、回答がためらいがちになる、手振り・身振りが少なくなる、瞬きが少なくなる、口を一文字にする、特定の微表情が起こる、です。これらのサインはウソをつくことにより生じる特定の感情(主に恐怖・軽蔑・嫌悪・罪悪感・幸福)の現れの場合とウソを繕うことによって頭がいっぱいいっぱいになることの現れの場合とがあります。  しかし、ウソのサインと言っても、それがウソをついているときに明瞭に起こるわけではありません。ウソと真実を話しているときを比べ注意深く観察すると、ウソのサインがウソをついているときに微妙に生じているのがわかる、そんな程度だと考えて下さい。ピノキオの鼻のようなウソのサインはないのです。  ウソを見抜くには、高レベルの集中と観察力が必要なのです。  こうした流れの中、受動的に集中してウソのサインの有無を観察するだけでなく、積極的に戦略的な質問をすることでウソのサインをより際立たせようとする研究や実務的な試みが2000年以降注目されています。  例えば、時系列がある出来事を逆に辿って答えてもらう逆質問法などがあります。正直者は「あるがまま」を語りますが、ウソつきは通常逆順でのアリバイは用意していないため、こうした想定外の質問を前にウソのサインをより多く出してしまうのです。  このような戦略的な質問を駆使することでウソ検知率の精度を80%まで高められることがわかっています。  最後に注意です。このような科学的事実がわかっていますが、ゆめゆめ訓練なしにウソ検知をしようとしないで下さい。実践なしの知識は、逆にウソ検知精度を下げてしまいます。 参考文献 DePaulo, B. M., Lindsay, J. J., Malone, B. E., Muhlenbruck, L., Charlton, K., & Cooper, H. (2003). Cues to deception. Psychological Bulletin, 129, 74-118. Frank, M.G., Hurley, C.M., Kang, S., Pazian, M., & Ekman, P. (2011). Detecting deception in high stakes situation: I. The face. Manuscript under review. Matsumoto, D., Hwang, H.S., Skinner, L., & Frank, M. G. (2011). Evaluating Truthfulness and Detecting Deception: New Tools to Aid Investigators. FBI Law Enforcement Bulletin, 80, 1-8. Vrij, A. (2008). Detecting lies and deceit: Pitfalls and opportunities. Chichester, UK: John Wiley & Sons, Ltd. <文・清水建二> 【清水建二】 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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