アルジャジーラがアラブ諸国の指導者から嫌われる理由
アラブの春によってエジプト革命を導いたその出来事をアルジャジーラは熱心に報道した。そのお陰で、<視聴率は2500倍に伸びた>という。その一方で、アラブ諸国の王政指導者から見ればアルジャジーラはムスリム同胞団など革命組織に加担していると映り敬遠されるのである。(参照:「Publico」)
それに輪を掛けるかのように、アルジャジーラの英語放送でスター的な存在のジャーナリストメディ・ハサン(Mehdi Hasan)は<「アラブ首長国連邦とサウジアラビアがイランを批難攻撃することを止めれば、イランは恐らく核武装に走ることはないであろう」>といった発言をしてアラブ諸国の指導者はアルジャジーラの存在を容認しなくなるのである。(参照:「Medium」)
特に、アルジャジーラのアラブ語放送になると、<イランを擁護する姿勢が顕著になり>、サウジアラビアやアラブ首長国連邦はそれを無視できなくなるのである。しかも、アルジャジーラはカタール政府の見解に従うかのように、<ムスリム同胞団やハマスが選挙か革命で権力を握るようになる>という姿勢が同放送のアラブ語の報道に伺えるというのである。(参照:「Medium」、「El Diario」)
この姿勢を恐れているのはアラブ諸国だけではなく、イスラエルも同様で、ネタニャフ首相はイスラエルでのアルジャジーラのオフィスの閉鎖を検討しているという。しかし、そこに<34人のアラブ系イスラエル人が勤務している>関係から閉鎖を表立てて表明しないようにしているという。一方、<ドイツのナチスに似ているような組織だ>と断言しているのは国防大臣のアヴィグドール・リーベルマンである。(参照:「Iton Gadol」)
アルジャジーラは中東においてジャーナリズムに調査研究ということを取り入れた初めての放送局である。しかも、問題のある分野の関係者へのインタビューや、タブーとされていることにも取り組んでいる。欧米では報道メディアで常識とされていることが、アラブ諸国では社会の秩序に背くものだとして報道が敬遠されていた。アルジャジーラはそれらの箍を取り除いて報道の自由を全面に訴えたのである。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
サウジやイスラエルが嫌った「イラン擁護」姿勢
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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