今回の打ち上げ失敗により、今後の中国の宇宙開発に、いくらかの影響が出ることは間違いない。
ただ、まず大前提として、新型ロケットの打ち上げ失敗というのは珍しいことではなく、どんなロケットでも一度は通る道である。ましてや、長征五号はエンジンも機体もなにもかもを新たに開発したロケットである以上、中国自身も1度や2度の失敗は覚悟していただろう。その点でいえば、今回の失敗はそれほど深刻なことではない。
ただ、長征五号による打ち上げを前提としていた宇宙計画に関しては、少なからず影響が出ることは避けられない。たとえば実践十八号のような、大型の静止衛星の打ち上げはもちろん、今年11月には月に着陸して砂や岩石を採取し、地球に持ち帰る大型の探査機「嫦娥五号」の打ち上げが予定されていたし、2018年からは大型の宇宙ステーション「天宮」の部品の打ち上げも始まる予定だった。
長征五号ロケット(写真は昨年11月の1号機のもの) Image Credit: CALT
しかし肝心の長征五号の打ち上げが失敗した以上、その原因究明や対策によって、数か月、あるいは年単位で遅れる可能性が出てきた。
もっとも、嫦娥五号は何も今年11月に必ず打ち上げなければならない、というものではなく、宇宙ステーションも同様である。打ち上げの遅れは計画全体の遅れとなり、追加コストも発生するだろうが、逆にいえば影響はそれくらいであり、どこの国でも宇宙計画が年単位で遅れることはよくあるので、決して楽観視できるものではないが、それほど深刻なことでもない。
現在の中国は、宇宙開発において世界で最も勢いがある国といってよい。1990年代の後半以降からこれまでに積み上げてきた技術力も確かなものがある。したがって、今回の長征五号の失敗をもって、中国の宇宙開発が立ち止まるということはなく、対策を施し、さらに信頼性を高めた上で、檜舞台に舞い戻ってくることになろう。
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
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Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・长征五号遥二火箭飞行出现异常 发射任务失利(
http://www.spacechina.com/n25/n144/n206/n214/c1676903/content.html)
・东方红五号卫星平台(
http://www.cast.cn/Item/Show.asp?m=1&d=2883)
・Long March 5 suffers failure with Shijian-18 launch | NASASpaceFlight.com(
https://www.nasaspaceflight.com/2017/07/long-march-5-lofts-shijian-18/)
・China’s Long March 5 Fails on Second Orbital Mission, innovative Shijian-18 Satellite lost – Spaceflight101(
http://spaceflight101.com/chinese-long-march-5-fails-on-second-mission/)
・Launch of China’s heavy-lift Long March 5 rocket declared a failure – Spaceflight Now(
https://spaceflightnow.com/2017/07/02/launch-of-chinas-heavy-lift-long-march-5-rocket-declared-a-failure/)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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