中国国内で他国のスパイへの検挙が強化されているという。その実態とは
先月報道された「CIAのスパイが中国国内で12人以上殺害されていた」というニュースは記憶に新しいが、以前にも中国は日本や他国のスパイを拘束したと何度か発表している。
2015年には中国外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官が記者会見で、「中国の関係当局は法に基づき、スパイ活動に従事した容疑で日本人2人を逮捕した」、「日本側には状況をすでに通知している」などと発表したこともあった。
このようなニュースに対してネット上では「日本人を無意味に逮捕するための方便、嫌がらせだ」「日中関係を牽制するためのブラフ」などといった意見が散見されるが、一般人には馴染みのない映画の世界のようなスパイ騒動の真偽を考えるべく、この記事では筆者の滞在している中国国内でのいくつかの経験を共有し、皆さんの考察の一助としていただければと思う。
まず、中国に在住している筆者に、スパイという存在を強く意識させたのは中朝国境地帯を旅していたときの一件であった。
国境地帯の中でも延辺朝鮮族自治州はその立地と性質の特殊さゆえに複雑な様相を呈している。延辺は中国国籍の朝鮮族の多く居住する地域で、一定の自治管理権が地方政府に付与されているが、朝鮮語が広範に使用されることもあって、韓国系の資本がここで多く市場展開している。
しかしながらこの地域は朝鮮半島で二つの国家が成立して以来思想対立の代理戦争の場となっていたことがある。今は落ち着きもしたが、20~30年前には両国から裏のルートで拳銃や資金が提供され、現地のマフィアなども交えて銃撃戦が起こったりしていたそうだ(これは現地で知り合った朝鮮族のヤクザの方から聞いた武勇伝的なお話なので多少の誇張はあるかもしれない)。
そういった話を思い起こしながら、私はアメリカ人の友人と共に鴨緑江国境付近の地域をローカルバス、汽車などを乗り継ぎ旅をしていた。名前は伏せるが延辺の首都・延吉を離れた田舎町を市内の舗装もまばらでかろうじて車の存在は確認できるといった発展具合だ。もちろん対岸は北朝鮮が見渡せる国境の街であるがこのくたびれた町にもタクシーはあり、100元(1600円程度)で郊外の見所を2時間ほどかけて回ってくれるというのでお願いした。