ワンウェブは約700機の人工衛星で地球を覆い、全世界にインターネットを提供しようという壮大な構想である Image Credit: Airbus D&S/OneWeb
FCCからの承認と、衛星の製造が始まったことで、ワンウェブはその構想の実現に向け、大きな一歩を踏み出した。
もっとも、ワンウェブが成功するかどうかはまだわからない。数百機もの衛星を造り、打ち上げ、運用し続けるには莫大なコストがかかる上に、技術的な問題も多い。
かつて1990年代には、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏らが、現在のワンウェブなどに似た衛星インターネット計画を立ち上げるも、最終的に断念している。当時と比べると、今の半導体は小さく軽く、高性能に、それで安価になり、それに伴い衛星を造るのにかかるコストも安価になった。ロケットの打ち上げ価格も安価になりつつある。それでも、まだ莫大なコストがかかることには変わりがない。
また、ワンウェブもスペースXも、開発途上国へのインターネットの普及を見込んでいるが、彼らが利用できるようになるためには、アンテナや端末の購入価格や、接続料金なども十分に安価でなくてはならない。一方で事業として続けていくからには、利益が出るほどにはお金を取らねばならない。高すぎると普及せず、安すぎるとシステムを維持できないという難しい舵取りを強いられる。
くわえて、国や場所によっては、従来のような光ファイバーのケーブルを直接引いたほうが安価に済む場合もあり、さらに飛行船やドローンを使ったインターネット計画もあることから、そうした衛星以外の仕組みとも勝負しなければならない場面も出てくるだろう(もちろん共存できる場合もあるだろうが)。
こうした事情から、近年でもFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏が衛星インターネットの検討を行うも、やはりコスト面から断念したと伝えられている。
それでも、ワンウェブやスペースX、さらにいくつかの企業が挑んでいるところをみると、何か妙案なり秘策なりがあり、事業化できる見通しがあるのだろう。それはまだ、私たちの目に見える形では明らかになっていないが、情報格差のない未来の訪れに、少しは希望をもってもよいのかもしれない。
製造が進むワンウェブの人工衛星 Image Credit: Airbus D&S
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
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Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・FCC Votes to Grant OneWeb Market Access to the United States – OneWeb | OneWorld(
http://oneweb.net/press-releases/2017/fcc-votes-to-grant-oneweb-market-access-to-the-united-states)
・OneWeb Satellites Inaugurates Serial Production Line for the Assembly, Integration, and Test of OneWeb’s First Satellites – OneWeb | OneWorld(
http://oneweb.net/press-releases/2017/oneweb-satellites-inaugurates-its-serial-production-line-for-the-assembly-integration-and-test-of-onewebs-first-satellites-affordable-low-latency-broadband-access-for-everyone)
・OneWeb Satellites inaugurates serial production line for the Assembly, Integration, and Test of OneWeb’s first satellites(
http://www.airbus.com/newsroom/press-releases/en/2017/06/one-web-satellites-serial-production-line-inauguration.html)
・STATEMENT OF CHAIRMAN AJIT PAI(
http://transition.fcc.gov/Daily_Releases/Daily_Business/2017/db0622/DOC-345467A2.pdf)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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