結論「トランプにはしゃぎすぎた!」――予想外の低成長と政権崩壊のロードマップ
2017.06.27
NY株の好調に対して、上値の重たい展開が続く東京市場。一体いつになったら明るい兆しは見えてくるのか? トランプ大統領のロシアゲート疑惑から闇株新聞氏が’17年後半戦を占った
トランプ政権の失速が際立ってきました。昨年の米大統領選でロシア政府がトランプ陣営に有利に働くよう介入していた疑惑を捜査していたFBIのコミー長官がトランプ氏によって解任されたことがきっかけです。
その前段として、トランプ政権で安全保障補佐官を務めていたフリン氏が政権発足前にロシア大使に電話して、ロシアへの経済制裁解除について相談していた疑惑が浮上。政権発足からわずか1か月で解任されました。その後、トランプ氏はコミー長官に対してフリン氏への捜査中止を要請。その要請に応じなかったことから、コミー氏まで解任されたと言われています。
この間、トランプ氏がロシアのラブロフ外相との会談でIS(イスラム国)に関する機密情報を漏らした疑惑も持ち上がりました。これらを受けて司法省は5月にモラー元FBI長官を特別検察官に任命して、ロシアゲートの捜査を行うよう命じました。今後、FBIと上下院の三つ巴の捜査・調査が本格化することで、米国の内政はさらに停滞感が強まることでしょう。まず、間違いなくフリン氏は司法取引に応じて逮捕を免れます。そこで引き出した証言から次に誰をターゲットとするのか? ロシアとの近さを見る限り、トランプ氏の娘婿であるクシュナー上級顧問、ないしはその“部下”のセッションズ司法長官だと予想していますが……どちらにしてもトランプ氏へのダメージは計り知れません。
そもそもトランプ政権はいまだに陣容が固まっていません。閣僚の議会承認は済みましたが、財務副長官候補に指名されていたゴールドマン・サックスのジム・ドノバン氏は5月前半に指名を辞退するなど、財務および国防の重要省庁の副長官さえ承認が済んでいないのです。さらに各省庁幹部の政治任用ポストにいたっては、議会承認待ちを入れても全体の2割に満たない状況です。これではとても正常な行政執行などできません。だから、2月初旬に提出されるべき予算教書が5月に提出され、それも国防予算の増額以外に目立った材料がないという、間抜けなことをやってしまうのです。
一方、米国の1~3月期GDPを見ると、年率換算で1.2%と減速しています。GDPの7割を占める個人消費が0.3%増という極めて低い成長だったことが原因です。米国重視の経済政策に対する期待から国内設備投資は増加しましたが、それが個人消費にほとんど結びついていないこと。さらに、物価上昇だけが継続しているという状況は、日本の現状と非常に似通っています。企業活動は活発なので、おそらくトランプ政権が本格的に失速してもNYダウは底堅い動きとなるでしょう。しかし、消費とのギャップが広がっている以上、それは単なる“バブル”でしかないのです。
総合すると、世界は「トランプ政権誕生ではしゃぎすぎた」というのは間違いありません。遅くとも、来年の中間選挙では完全にトランプノミクスは瓦解すると予想しています。
【闇株新聞】
’10年に創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者などのプロから注目を集めることに。現在、新著を執筆中
「ロシアゲート」でトランプ政権崩壊!?
米1~3月期GDPは予想以上の低成長に
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