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ロックはロケットを抱えて上空まで飛び、そこでロケットを切り離す。ロケットは宇宙へ、ロックは飛行場に着陸する Image Credit: Stratolaunch Systems Corp.
同社は巨大飛行機からの空中発射というやり方を「地球低軌道への衛星打ち上げを当たり前のことにするため」と語る。しかし、ストラトローンチがビジネスとして成功するかどうかは、空中発射の利点を最大限に活かし、なおかつ欠点を最小限に抑えられるかにかかっている。ただ、残念ながらその未来はあまり明るくないようにみえる。
たとえば、地上から発射される他のライバルとなるロケットが、空中発射の長所を奪う可能性もある。たとえば大きく海が開けた場所に発射台があれば、飛ばす方角の問題は解決されるし、ミサイルのような移動式の発射台から打ち上げられるようにすれば、なおのこと自由が効く。
結局のところストラトローンチには、ストラトローンチにしかできない、あるいはストラトローンチならではの、何か唯一無二の売りがあるわけではない。口さがない人は「彼(ポール・アレン)は単に、世界最大の飛行機を造りたかっただけなのではないか」と言うなど、金持ちの道楽扱いするほどである。
ストラトローンチはもともと、イーロン・マスク氏が率いる宇宙企業「スペースX」と共同でビジネス展開をしようと考えていた。スペースXが運用している「ファルコン9」を改造して、ロックから空中発射しようとしていたのである。しかし、両社の考えが合わないことから破談に終わっている。つまりマスク氏にとって、空中発射はあまりよくないアイディアだったようである。
その後、ペガサスを製造しているオービタルATKと協力することになった際も、当初は新しい中型ロケットを開発して、それをロックから発射するという計画もあったが、これも流れ、結局は既存のペガサスを積んで発射するという、現在の計画に行き着いた。
しかし、そもそもペガサスすら1年に1~2機程度しか打ち上げられておらず、商業的に成功したロケットとは言い難い。それを世界最大の飛行機から発射したたところで、何かが大きく変わることはない。
同社はまた「ロックはさまざまなロケットの発射に使える。載せられるロケットを広く探している」と語っているが、それは現時点で、ストラトローンチにどのような規模、性能のロケットを載せ、どのくらいの頻度で飛ばせばよいのか、という明確なビジョンがないということもであろう。
幸いにも近年、ペガサスで打ち上げられるような質量数百kgほどの小型衛星の需要は増えている。ロックが完成し、打ち上げができるようになれば、それなりの受注は得られるかもしれない。しかし、スペースXなどの他の宇宙企業が目指すような、宇宙ビジネスにおける革命が起こせるかどうかは未知数である。
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世界最大の飛行機のひとつとなったロックの将来は、不透明である Image Credit: Stratolaunch Systems Corp.
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・Stratolaunch News – Stratolaunch Aircraft Makes First Rollout To Begin Fueling Tests 5/31/2017(
http://www.stratolaunch.com/news/FirstRollout.html)
・Stratolaunch News – Orbital ATK and Stratolaunch Partner to Offer Competitive Space Launch Opportunities 10/06/2016(
http://www.stratolaunch.com/news/OrbitalATK.html)
・Stratolaunch Aircraft Makes First Rollout to Begin Fueling Tests | Paul Allen(
https://www.paulallen.com/stratolaunch-aircraft-makes-first-rollout-to-begin-fueling-tests/#stratolaunch-aircraft-makes-first-rollout-to-begin-fueling-tests)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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Twitter:
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