この検事調べから勾留質問の流れは、住んでいる地域によって若干違いがある。刑事事件の発生件数が少ない地方都市の場合、午前中に検事調べがあり、午後から勾留質問が行われる。これは、たいていの地方検察庁と地方裁判所が隣接しており、1日で手続きが終わってしまうためだ。
一方、痴漢事件に限らず事件が多発する都市部では、毎日300件超もの事件を処理しなければいけないので、1日目に検察庁で検事調べ、そして翌日は裁判所で勾留質問という流れになっている。護送バスに何十人もの被疑者と一緒に、検察庁や裁判所に連れまわされる2日間は、身柄拘束中もっともハードなものといえるだろう。
こうした手続きによって、裁判所が検察の勾留請求を認めると、まずは最長10日間の「勾留」が決定し、被疑者の身柄拘束は続く。留置場で身柄を拘束され、連日警察の刑事から取調べを受けるという実情は同じだが、自由を奪っている法的根拠が「逮捕」から「勾留」に変わるのだ。
痴漢事件に限らず、かけられている容疑に対して否認を続けると、勾留のタイムリミットである10日間が過ぎても勾留は続くことが多い。別に警察や検察が法律を無視しているわけではなく、勾留満期が近づくと検事は裁判所に対して、「勾留延長申請」という手続きを行うのだ。
勾留延長が申請された場合、裁判所は最初の勾留申請時のように、被疑者を呼び出して勾留質問をすることもなく、書類審査だけで、あっさり勾留の延長を決定してしまう。延長された勾留のタイムリミットは最長で10日間。つまり、起訴前の勾留は最長で20日間なのだ。
この勾留期間中に検察の検事は、被疑者を起訴して裁判を起こすか、不起訴処分にして被疑者を釈放するかを決定する。事件によっては、勾留満期になっても起訴か不起訴かを決めきれない場合(処分保留)もあるが、普通の痴漢事件であれば、たいていは勾留満期になった時点で、起訴か不起訴かが決定されるわけだ。