ホールではなく、メーカー側の動きはどうか。少なくとも、昨年のパチンコMAX機撤去問題においては、メーカー側がホールにお願いする形で事が進んだ。パチンコ機の出荷状態における「違法の可能性」を警察庁に指摘されたのだから当たり前ではあるが。
パチスロメーカーとしてはどうなのか。
パチスロメーカー側は、ギャンブル等依存症対策の一環としての射幸性の抑制とは違う観点から、でもパチスロ旧基準機の撤去を推進したいと考えている。
当たり前だ。3年も4年も前に販売したパチスロ機が現役バリバリで稼働しており、旧基準機よりも出玉性能が落ちる新基準機(現行では新基準機のみ販売可能)の販売がふるわないメーカーにとって、旧基準機は目の上のたんこぶにもなり得る。
しかし前述のように、パチスロ旧基準機は法的な「違法機」ではない。その上で、メーカー側の意向で旧基準機の撤去を推進するのであれば、入れ替える新台の価格を劇的に引き下げたり、旧基準機の下取り価格を高く設定したりと、ホール側に対する少なくない支出を覚悟しなくてはいけない。
メーカー側としては、旧基準機の機械性能云々の文脈で撤去を促すのではなく、あくまで警察庁の要請に応える、もしくは社会的な要請に応えるという「理由」で撤去を推進したいのだが、やはり「射幸性は高いが違法ではない」という壁は如何ともし難い。
また、もう一つの根拠として、警察庁が遊技機の仕様に関わる規則の変更を明言していることがある。
ホールが、現時点では「違法ではない」とつっぱねようが、規則自体が変わってしまえば、「違法」になる可能性もある訳で、そうなれば全撤去を免れない。業界関係者は、最後の最後に振り下ろされる、警察庁の強権を憂慮してもいる。
しかし、この規則改正についても、警察庁は激変緩和措置(猶予期間)としての経過措置期間を設けるとしており、常識的な判断をくだすのであれば、改正された規則が施行されたのち、最大3年間というのが目安である。勿論、この経過措置期間は行政側の一存で長くも短くも出来るが、間違っても「年内中に規則を改正し即施行、経過措置期間も最短」という形にはならない。
業界関係者の言葉を借りれば、規則改正は秋以降になると目されており、施行は来春くらいではないだろうかと予測されている。
ただ、この旧基準機に関しては、減台はもちろんのこと、遠くない将来にはホールから撤去されるのは間違いない。
パチンコホールとしても、射幸性の高い遊技機に頼らない収益構造を確立するための努力が求められているし、客も過度な射幸性を求めてパチンコホールに行く時代は終わり始めていることを見越し、あくまで「遊び」としてパチンコ・パチスロと付き合っていくべきだろう。
<文・安達 夕
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