このアンケート結果を受け、お得情報に詳しいまつのすけ氏は、「今後、ふるさと納税のお得度が薄れていくのは間違いないでしょう」と指摘する。では、我々はどうやって、ふるさと納税をお得に活用していけばいいのか?
「1万円の寄付で、地元でも使える5000円相当の感謝券がもらえるような返礼品は、今後なくなっていくでしょう。しかし、明確な金額がわかりにくい宿泊券のようなものは、なくならないのでは。例えば神奈川県小田原市では、ヒルトンホテルのツインルーム1泊2日夕朝食付きの施設利用券があります。金額は宿泊する曜日や申し込むサイトによってブレがあり、一律に規制することは難しそうです。山梨県山梨市では『富士屋ホテル2名様宿泊券』がありますが、還元率で4~6割に相当します」(まつのすけ氏)
また、今はまだ高額な家電製品を扱っている自治体もある。例えば、大分県国東市に30万円の寄付をするともらえるキヤノンの一眼レフカメラは、アマゾンで約12万円で売っている。寄付額の4割で転売ができてしまうのだ。
「高額で換金性の高い家電製品に、駆け込み寄付をする人が増えているようです。また、小田原市では直近では1か月に1回、iPadが返礼品としてもらえる特典をゲリラ的に行っています。同様に、通年での提供はなくなっても、期間限定でパソコンなどを提供する自治体はあるでしょう」(同)
まつのすけ氏は、総務省の「3割規制」に賛同しながらも、懸念があるという。
「返礼品競争の過熱はやはり問題なので、基本的に3割に抑えるというのはいいことだと思います。しかし、還元率の高い感謝券や高額な家電製品などを提供していた自治体のなかには、3割に抑えることで、今後、大幅な税収減になってしまう自治体が出てくるかもしれません」
また、もう一つの問題が、自治体の疲弊だ。今回、回答をもらった23自治体のうち11自治体が「確定申告をしないで済む『ワンストップ特例制度』は確かに寄付者を増やすことに繫がったが、事務処理が膨大になった」「寄付者のマイナンバーの確認、マイナンバー情報管理などが大変」といった自治体の事務作業の負担増を挙げた。なかには、「ワンストップ特例は、寄付者にとっても、確定申告をする以上に手間になっているのではないか」という声もあった。
「ふるさと納税は基本的にはいい制度ですが、“バブル”になっていた面もあります。制度が縮小したり廃止になったりすることが一番よくないことで、細く長く続く制度になるのが幸せではないでしょうか。3割規制を機に、振り返るべきときにきているのかもしれません」(まつのすけ氏)
総務省「平成28年度ふるさと納税に関する現況調査について」より
1位:宮崎県都城市・42億3123万4000円
2位:静岡県焼津市・38億2558万2000円
3位:山形県天童市・32億2784万4000円
4位:鹿児島県大崎町・27億1964万2000円
5位:岡山県備前市・27億1568万6000円
6位:長崎県佐世保市・26億4759万7000円
7位:長崎県平戸市・25億9978万5000円
8位:長野県伊那市・25億8262万7000円
9位:佐賀県上峰町・21億2996万0000円
10位:島根県浜田市・20億9357万3000円
11位:山形県米沢市・19億5824万7000円
12位:千葉県大多喜町・18億5520万6000円
13位:福岡県久留米市・17億5942万9000円
14位:長野県飯山市・17億2243万3000円
15位:北海道上士幌町・15億3655万9000円
16位:佐賀県小城市・14億8449万8000円
17位:宮崎県綾町・13億8034万1000円
18位:山形県寒河江市・13億7178万8000円
19位:高知県奈半利町・13億4993万1000円
20位:北海道根室市・12億9010万2000円
’15年度のふるさと納税による寄付金総額は1652億円。寄付金額が多い上位30自治体で、全寄付額のうち3分の1を占める
【まつのすけ氏】
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取材・文/ふるさと納税取材班