類は友を呼ぶといいますが、筆者の友人にもニートがいます。もともとは勝気で自信に溢れたキャリウーマンでしたが人間関係のトラブルで仕事を辞めて以降、3年以上も実家でニート生活を継続中。近頃では「庭でプチトマトを育て始めたんだ~。次はピーマンかな」なんて定年退職した紳士のようなことを言い始めている始末です。
彼女が完全にニートというアリ地獄にはまった理由は“実家暮らしで貯金がある”というのが大きな一因でしょう。「あと2年はニートやれる」というのが、彼女の最近の口癖です。
一方、まともに働いている友人からは「グチ攻撃」にあいました。
例えば友人が急に、午後休が取れることになったとしましょう。そうすると暇人だと思われているため「明日会えないか?」という連絡がきます。当然、家でゴロゴロしているだけの筆者は二つ返事でOKします。そしてカフェでお茶でも飲みながら、上司や同僚のグチを聞かされるのです。
ニートになりストレスフリーだった筆者は、最初のうちは寛大な態度で接していましたが、散々グチを聞かされたあとに、「私もニートになりたい~」という軽いマウンティングの言葉を投げられてばかりいては堪忍袋の緒が切れるってもんです。
話を聞いてくれる十分な時間を持っており、かつマウンティングできる――。そういう対象として見られていると悟った時に、ようやく転職サイトに登録しました。
ニートになってしばらくたったある日、筆者の生活を心配した元同僚が飲み会を開いてくれました。
最初は筆者の話が中心になるものの、酒のピッチが進むにつれ仕事の話が多くなってきます。マウンティングするつもりは毛頭なくても、働き盛りの人間が集まれば仕事のグチが出るのは当然のこと。はじめは適当に相槌を打っていましたが、最前線で戦う彼らの熱量に段々ついていけない自分がいることに気がつきました。
30歳にして、無職・独身。この現状を再認識した時の精神的ダメージは、経験した人間にしかわかりません。
仕事をしていればそれなりに異性と出会うチャンスがあり、そこからお付き合いに発展する能性もゼロではないですが、ニートの場合は新しい人と会えるチャンスがない。
行きつけの居酒屋の店員がいくら美人だったり、カッコよくても、30歳ニートと恋愛してくれる確率はかなり低いことはわかりきっています。まともに仕事をしていれば出会いもあってお金の心配もいらない、それは心の安寧につながるのです。
さてさて、3か月の無職生活を経て感じたのは、ニートは癖になるということ。「いやいや、それだけで何がわかる!」という声もあるかもしれませんが、職を得た今でも、ふとあの頃の生活を思い出します。それでも前述のような経験をしたこと、また労働が国民の義務である以上、私も働かないわけにはいきません。次にこの心地よい生活ができるのは、定年退職後ということですね。
<文/佐藤紫子>