「音楽教育」において使用料が発生するのは妥当なのか
ヤマハ音楽教室などの音楽教室に対し、著作権使用料を徴収する方針を固めたJASRAC(日本音楽著作権協会)に対し、ヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所などが、使用料支払いの義務がないことの確認を求めて提訴することを決めた。
日本経済新聞(5/30)によれば、「JASRACの徴収方針を受け、ヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所などは設立した『音楽教育を守る会』の初の総会を30日に都内で開き、提訴を正式に決めた。守る会事務局によると、音楽教室を手掛ける企業や団体の約340会員のうち、約270会員が集団提訴に賛同。原告は賛同した会員から募る」
世間では、JASRACは「金の亡者」のような印象を受けかねない報道が連日流されているが、はたして実際のところはどうなのか。司法の判断が待たれるところではあるが、この件では、法的な問題と世間一般の感情(常識)的な問題が入り乱れていて問題の焦点が見えづらくなっている。
本稿では、今回の「JASRAC VS 音楽教育を守る会」の問題点について整理してみる。
今回の問題が世間一般に広く周知されたきっかけの一つが、今年の2月4日に歌手の宇多田ヒカルさんがツイッターに投稿したこの一言。
「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな」
JASRACに対する非難のうち、一番大きな声として発せられるのがこの「教育から金を取る」という見え方である。
しかし本当にそうなのか。JASRACは少なくとも学校等の教育現場から新たに著作権使用料を取ろうとしている訳ではない。
「教室」とか「教える」とか「音楽教育」という言葉の煙幕によって問題点の認識がぼやけるのだが、「ヤマハ音楽教室」だって「カワイ音楽教室」だって、営利目的の立派なビジネスである。まずは、教育とビジネスとをしっかりと切り分けて問題を考えるべき。
個人的には「音楽教育を守る会」というネーミングにも違和感がある。正確には「音楽ビジネスを守る会」であり、仮にそうであれば、世間の印象は大分違ったものになるだろう。