トランプの不法移民対策「国境の壁」が無意味であることの最大の理由

 しかし、ラモスは他の記者たちの間でも、特にラテン系の記者の間では影響力を持つ人物であり、彼のニュース番組は高い視聴率を持っている。彼の存在はトランプも無視できないのである。そのため、ラモスは記者室に戻る事が許された。  記者室にラモスが戻ると、両者は距離を置いて軽い挨拶を交わしたあと、ラモスは再び質問をトランプに向けて投げたのである。他の記者たちもラモスが質問できる時間を暗黙の中で与えたのであった。 ラモス「あなたの移民プランは意味のない公約でいっぱいです」「米国で生まれた移民の子供に市民権を拒否することなど出来ない」 トランプ「どうしてそれを言うのだ」 ラモス「見識ある法学者の中にはそのようなことはできないと言っている」  彼の質問時間が長引くのを他の記者たちも了解しているようで、ラモスは質問を続けた。 ラモス「米国に在住許可を持たない人の40%は空港から入国するのであって、メキシコとの国境からではない」 トランプ「私はそうは思わない」 ラモス「2006年のPew Hispanic Centerの報告によると、在住許可のない人の45%は一時入国ビザで入国して、その有効期限が切れた後も在住を続けているということになっている」  ラモスからレクチャーされたトランプはメキシコ移民を全面的に否定するのではないということを仄めかすかのようにラモスに「私の為にどれだけ多くのラテン人が働いているか知っているか?」と尋ね、そしてラモスからの回答を待つ前にトランプ自ら「数千人だ」「私を尊重してくれている」と自問自答したのであった。(参照:「La Nacion」、「Clarin」)
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国境を超えて来た不法移民は少ない
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