「ぱいぱいでか美」の挑戦――社会の多様性が試されている

ぱいぱいでか美

ぱいぱいでか美公式HPより

【石原壮一郎の名言に訊け】~ぱいぱいでか美 Q:僕は男性には興味ありません。でも、見かけがナヨナヨしていて、しかも女兄弟の中で育ったので言葉づかいが女性っぽいせいか、いつもオネエ扱いされてばかりです。会社の人も、僕のことを完全にオネエだと決めつけていて、事あるごとに「その手つき、色っぽいね」などといじってきます。いくら「僕はオネエじゃありません!」と言っても信じてもらえません。本当にイヤになります。(東京都・24歳・医療品販売) A:いいんじゃないでしょうか、そう思いたい人には思わせておけば。いじってくるのも、あなたとコミュニケーションを取ろうとしてのことだし、ほかにとくに話題もないから、ちょうどいいネタにしているだけです。たしかに下手くそないじり方かもしれませんけど、いちいち目くじらを立てるほどのことではありません。  昨今、この手の「下手くそないじり方」への風当たりが強くなっています。もちろん、度を越していたり悪意が前提だったりするのは論外ですが、世の中の人がいつも自分の希望通りに接してくれると思ったら大間違い。ちょっとぐらいの違和感やウンザリ感は苦笑いで片付けてしまうのが、大人のたくましさであり毎日を平穏に生きる極意です。「傷ついた」という相手に厳しく自分に甘い伝家の宝刀は、気軽に抜くと癖になりかねません。  それより気になるのは、あなたが何の躊躇も疑いもなく、オネエと呼ばれる人たちを一段下に見ていること。ま、周囲の人たちもそういう意識を元にいじっているようですが、事実ではないレッテルを貼られて不愉快というだけでなく、一種の侮辱だと受け取っているとしたら、それはオネエのみなさんに失礼です。  一度聞いたら忘れない芸名の代表格である、タレントのぱいぱいでか美さん。彼女は、4月24日付「朝日新聞」に載ったインタビューの中で「この芸名がたたかれる背景の一つに『女性なのに下ネタなんてはしたない』という考えがあるのだと思います。社会には、そんな無意識に刷り込まれた感情がたくさんあります」と語っています。続けて、こんなことも。 「個性を認め合う雰囲気が社会全体に広がれば、もっと居心地が良くなるかもしれないですね。『ぱいぱいでか美』が受け入れられるかどうかも、社会の多様性を見る指標の一つになると思います」  あなたが持っている「オネエっぽい」という個性は、ぜんぜん恥ずかしいものではありません。オネエっぽくて何が悪いと開き直ることで、いじられても軽く流せる自分になったり、偏見に縛られずにすべての人をフラットに見ることができる自分を目指したりしましょう。デブやハゲや口下手や人見知りなど、ほかの「個性」に悩んでいる人も、同じように開き直ることで気持ちを楽にすることができるかも。  ぱいぱいでか美さんは、この芸名で活動している自分を見ることで、生きづらさを感じている人が、少しでも自由になってくれたらうれしいと言っています。オネエ扱いされてムカッとしたときは、口の中で「ぱいぱいでか美」という名前を呟いてみましょう。そこに込められた崇高な願いを思い出しつつ、しかもでかいぱいぱいのイメージが浮かんで幸せな気持ちになれるので、怒りはたちまち消滅するはずです。 【今回の大人メソッド】

名前の響きや胸の大きさで人を判断してはいけない

 たしかに「ぱいぱいでか美」という芸名は、ふざけた印象を持たれても仕方ありません。また、なぜか世間の一部には「胸が大きい女性は頭が弱い」という謎の偏見がありますが、それが大間違いであることも証明してくれています。彼女の胸元をじっと見つめれば、先入観や思い込みに縛られず、ふんわりと物事をとらえる大切さを再確認できるでしょう。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、最新刊は、今日からすぐに使える大人のフレーズが身につく『大人の言葉の選び方』(日本文芸社)
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